非常食は、買って備蓄した年の損金(消耗品費)にしてかまいません。国税庁の質疑応答事例が、25年保存できる非常食について「備蓄時に事業供用があったもの」として、その時の損金に算入して差し支えないと答えています。一方で、パーテーションや発電機のように繰り返し使う物は減価償却資産になり、取得価額が10万円未満なら、事業の用に供した年度に一度に損金にできます。分かれ目は、使い切る物か、繰り返し使う物かです。

BCP対策の備蓄を稟議にかける総務の方が、経理から「これは資産計上? 経費?」と聞かれたときのための記事です。国税庁の質疑応答事例「非常用食料品の取扱い」、法人税基本通達2-2-15、国税庁タックスアンサー(少額の減価償却資産・中小企業者等の特例)をもとに、品目ごとにどこで扱いが分かれるのかを整理します。最終的な処理は、自社の事実関係に当てはめて顧問税理士と決めてください。この記事は、その相談を短く済ませるための下準備です。

根拠の資料|非常食は「備蓄した時」、繰り返し使う物は「10万円未満」で一度に損金

資料書いていること
国税庁 質疑応答事例「非常用食料品の取扱い」(令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成)照会は、災害時の非常用食料品として、賞味期間25年のフリーズドライ食品を1万人分(2,400万円)購入・備蓄した会社。回答は「備蓄時に事業供用があったものとして、その時の損金の額(消耗品費)に算入して差し支えありません」
同 回答の理由(4つ)①食料品は繰り返し使用するものではなく、消耗品としての特性をもつ ②効果が長期間に及ぶとしても、食料品は減価償却資産・繰延資産に含まれない ③仮に「消耗品で貯蔵中のもの」(棚卸資産)だとしても、災害時用の非常食は備蓄することをもって事業の用に供したと認められる ④類似物品として、消火器の中味(粉末又は消火液)は取替え時の損金として取り扱っている
法人税基本通達2-2-15(消耗品費等)消耗品の取得費用は、原則として消費した日の属する事業年度の損金。ただし事務用消耗品などで「各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するもの」は、継続して取得した年度の損金にしていれば認める
国税庁 タックスアンサー No.5403「少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示」(令和8年4月1日現在法令等)使用可能期間が1年未満のもの、または取得価額が10万円未満のものは、事業の用に供した年度に全額を損金経理すれば損金になる。取得価額は「通常1単位として取引されるその単位ごと」に判定(応接セットはテーブルと椅子の1組、カーテンは部屋ごとの合計)。20万円未満なら3年間で償却する一括償却資産も選べる。いったん資産に計上したものを、後の年度で一度に損金経理しても損金にはならない
国税庁 タックスアンサー No.5408「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」(令和8年4月1日現在法令等)青色申告の中小企業者等(資本金1億円以下が基本・常時使用する従業員400人以下。資本金1億円超などの特定法人は300人以下)は、取得価額40万円未満の減価償却資産を、令和11年3月31日までに取得して事業の用に供すれば全額損金にできる。年300万円が限度。令和8年度改正で、令和8年4月1日以後の取得分から30万円未満→40万円未満、従業員500人以下→400人以下に変わった

国税庁の事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答で、個別の取引に当てはめると課税関係が異なることがある、と注記しています。それでも、「25年もつ非常食を一度に2,400万円分買った」という、いちばん資産に見えやすい例で備蓄時の損金を認めている点は、社内で説明するときの足場になります。

前提の切り分け|「使い切る物」と「繰り返し使う物」で、効く資料が違う

備蓄品をひとまとめに「消耗品」と呼ぶと、経理との話がかみ合いません。品目を2つに分けると、どの資料を見ればよいかが決まります。この分け方は、資料に沿って当社が整理したものです。

分け方主な品目見る資料扱いの目安
使い切る物非常食、飲料水、携帯トイレの便袋・凝固剤、衛生用品国税庁 質疑応答事例「非常用食料品の取扱い」、法人税基本通達2-2-15非常食は事例どおり備蓄時の損金。それ以外は事例に直接は書かれていない(後述)
繰り返し使う物パーテーション、組立式の簡易トイレ(便器)、毛布、発電機、蓄電池、台車、棚タックスアンサー No.5403・No.54081単位の取得価額が10万円未満なら全額損金。20万円未満なら3年間で償却する一括償却も選べる。青色申告の中小企業者等は、令和8年4月1日以後の取得分から40万円未満まで(年300万円まで)

費用の面から品目を「消耗品・設備・一度きり」の3層に分けた整理は防災備蓄の費用の相場はどのくらいですかにあります。税務の分け方も、ほぼこの層の境目に沿います。

数え方|金額は「1回の注文」でも「1個」でもなく、「1単位として取引される単位」で見る

繰り返し使う物の10万円・20万円・40万円の線は、注文書の合計額で判定するのではありません。国税庁は「通常1単位として取引されるその単位ごと」に判定すると書き、カーテンは1枚では機能せず部屋で数枚を組み合わせて機能するので、部屋ごとの合計で見る、と例を挙げています。

備蓄品に置き換えると、毛布を100枚まとめて買っても、1枚ずつ取引され1枚で使える物なら、判定は1枚の価額が基本です。逆に、何枚かを連結して初めて区画になるパーテーションや、便座・本体・テントを組み合わせて1基になる簡易トイレは、組み合わせた単位の合計で見られる可能性があります。どこまでを1単位と見るかは物の作りと買い方で変わるので、見積書の段階で品名と構成を経理に渡し、判定をそろえておきます。

計算例|従業員100人と300人で、7日分を2年に分けて買う場合

当社は備蓄日数を7日分を目標、3日分を必須と置いています。公表基準は3日分(内閣府ガイドライン・東京都条例)で、7日分は当社の置き方です。実際には3日分から段階的にそろえる会社が多いので、ここでは1年目に3日分、2年目に残りの4日分を買う場合で考えます。このとき、非常食は買った年ごとの費用になります。携帯トイレや水も同じ扱いにできるかは、後述のとおり顧問税理士に確かめる項目です。

携帯トイレの回数で数えると次のとおりです。式は「算定対象人数 × 1日5回 × 日数 ×(1+予備率20%+東京都10%)」です。1日5回は内閣府のトイレのガイドラインの数字、予備率20%は当社の置き方、東京都10%は都の言う帰宅困難者のための共助分で、都内の拠点だけに乗せます。2つの率は掛け合わせずに足します。

都内の拠点1年目:3日分2年目:残り4日分7日分の合計
算定対象人数100人1,950回分2,600回分4,550回分
算定対象人数300人5,850回分7,800回分13,650回分

都外の拠点は東京都10%を乗せないので、100人で1年目1,800回分・2年目2,400回分、300人で1年目5,400回分・2年目7,200回分です。

この表から分かるのは、2年目の購入量のほうが多いことです。日数の掛け算が効くのは使い切る物だけで、毛布は1人1枚のまま、便器の基数も日数では増えません。繰り返し使う物は1年目に買いそろえ、2年目は使い切る物の上積みだけ、という予算の組み方になります。どの品目を買った年の費用にするかを、購入の前に経理と合わせておけば、翌年度に「資産に計上されていた分」が後から出てくることはありません。

実務でつまずく点

1. 原則どおりに読むと、非常食は「食べた年」まで費用にならない

経理担当者が最初に思い浮かべるのは、法人税基本通達2-2-15です。消耗品の費用は原則として「消費した日の属する事業年度」の損金で、買った年に落とせるのは、毎年おおむね一定量を買い、経常的に使う事務用品などに限られます。非常食は災害が起きなければ使わず、毎年決まった量を消費するものでもないので、この例外には素直に当てはまりません。原則だけで読むと、非常食は災害で食べるか、期限切れで処分するまで「貯蔵品」として残る、と解釈される余地があります。

国税庁の事例は、ここを別の理由で解いています。災害時用の非常食は、備蓄することそのものが事業の用に供したことに当たる、という理由です。消火器の中味が、使われるのを待っている間も取り替えた時に損金になるのと同じ考え方です。経理から「消費していないので資産では」と言われたら、この事例の理由3と4を見せれば話が進みます。

2. 事例が直接書いているのは「食料品」だけ

事例の照会は非常用食料品で、理由の1と2も「食料品は」と書いています。飲料水、携帯トイレの便袋や凝固剤、衛生用品については、事例に書かれていません。使い切る物で、備えておくことに意味があるという点では似ていますが、同じ扱いになるかを当社は判断しません。顧問税理士に事例のページを示し、水と携帯トイレにも同じ理由を当てはめてよいか、品目を挙げて確かめてください。確かめた結果は、稟議書に1行残しておくと、担当が替わっても同じ処理を続けられます。

3. 繰り返し使う物は、一度「資産」に載せると、あとでまとめて費用にはできない

国税庁は、少額の減価償却資産について、事業の用に供した年度に全額を損金経理した場合に損金になるとし、「いったん資産に計上したものをその後の事業年度で一時に損金経理をしても損金の額に算入することはできません」と注意しています。買った年に経理と処理を決めずに資産に載せてしまうと、後の年度にまとめて費用にすることはできません。購入の稟議と同じタイミングで、品目ごとの処理を決めておきます。倉庫で出番を待つ発電機やパーテーションを、いつ「事業の用に供した」と見るかも、非常食の事例のようには書かれていないので、あわせて顧問税理士に確かめます。

4. 中小企業者等の40万円の線は、令和8年4月1日以後に買った物から

中小企業者等の特例は、令和8年度の改正で取得価額の上限が30万円未満から40万円未満に上がりました。一方で、常時使用する従業員の基準は500人以下から400人以下に下がっています。どちらも令和8年4月1日以後に取得した資産から適用されます。従業員が400人を少し超える会社は、昨年度まで使えた特例が使えなくなっている可能性があります。年間300万円の限度もあるので、発電機や蓄電池を同じ年度にまとめて買うときは、合計額も見ておきます。

なお、事業継続力強化計画の認定で使える防災・減災の税制(特別償却)は、自家発電設備など一定額以上の設備(機械及び装置100万円以上、器具及び備品40万円以上、建物附属設備60万円以上)が対象で、水・食料・便袋のような使い切る物は対象外です。発電機を計画に載せて買うなら、こちらの税制が使える場合があります。詳しくは防災備蓄の予算を、社内でどう通せばいいですかに整理しました。

5. 期限切れで処分するときに、帳簿の上では何も残っていない

非常食を備蓄した年に損金にしていれば、期限が来て入れ替えるときに、帳簿に残っている金額はありません。処分のときにかかるのは、回収や運搬などの処分費用だけです。なお事例では、照会した会社自身が、品質保証期間2〜3年の従来品は取り替えの費用を配備した時の損金にしていると述べています(国税庁の回答部分ではありません)。逆に貯蔵品として資産に載せていた会社は、処分した年にその分が費用として出てきます。処分の方法そのものは期限が切れた防災備蓄(非常食・水・携帯トイレ)は、会社でどう処分すればいいですかにまとめています。

社内でどう説明するか

経理と決裁者に向けては、次の3行を稟議書の「会計処理」の欄に置くと話が早く進みます。

「非常食は、国税庁の質疑応答事例『非常用食料品の取扱い』により、備蓄時の消耗品費として処理します。」

「飲料水・携帯トイレは、同じ扱いでよいかを顧問税理士に確認のうえ処理します(確認日・回答を記録)。」

「パーテーション・簡易トイレ・発電機等は、1単位の取得価額で判定し、10万円未満は少額の減価償却資産として処理します。」

予算の大きさで止まりそうなときは、7日分を一度に買わず、3日分を1年目、残りを2年目に分ける計画にします。国の資料が示す3日分を先にそろえ、残りを次年度の予算に載せる形です。数量の根拠と年度ごとの費用が並んでいれば、決裁者は「今年いくら出すか」だけを判断すれば済みます。

よくある誤解

よくある理解実際
長期保存の非常食は何年も使うので、資産に計上する国税庁の事例は、賞味期間25年の非常食でも備蓄時の損金(消耗品費)でよいと答えている。食料品は減価償却資産にも繰延資産にも含まれない
非常食は災害で食べた年に費用になる原則(基本通達2-2-15)だけを読むとそうなるが、事例は「備蓄することをもって事業の用に供した」として備蓄時の損金を認めている
水も携帯トイレも、非常食と同じ扱いで決まっている事例が直接扱っているのは食料品だけ。ほかの品目は顧問税理士に確かめる
10万円の線は1回の注文の合計で見る「通常1単位として取引されるその単位ごと」に判定する。組み合わせて機能する物は、組み合わせた単位の合計で見られうる
事業継続力強化計画の認定を取れば、備蓄品の購入費に税の優遇がある防災・減災の税制の対象は一定額以上の設備(自家発電設備など)。水・食料・便袋のような使い切る物は対象外

まとめ

  • 非常食は、国税庁の質疑応答事例により、備蓄した時の損金(消耗品費)にしてかまわない。25年保存の品でも同じ
  • 事例が直接扱うのは食料品だけ。水・携帯トイレは顧問税理士に事例を示して確かめ、結果を稟議に残す
  • 繰り返し使う物は、1単位の取得価額が10万円未満なら全額損金、20万円未満なら3年の一括償却も選べる。中小企業者等は令和8年4月1日以後の取得分から40万円未満(年300万円まで)
  • 繰り返し使う物は、一度資産に計上すると後の年度にまとめて費用にはできない。処理は購入の稟議と同時に決める
  • 7日分を2年に分けて買うと、非常食はそれぞれの年の費用になる。2年目に買い足すのは使い切る物だけ

この記事の論点だけでも、品目ごとの使い切る・繰り返し使うの区分、1単位の判定、顧問税理士への確認、資産計上の有無、従業員数と特例の線、年度ごとの購入量と、確かめることが6つあり、入れ替えや買い増しのたびに同じ判断が要ります。処理の判断に追われて数量の確認が抜ければ、そこで備蓄が足りなくなります。備蓄は人の命に関わるので1つも落とせず、これを担当者1人が覚えて回し続けるのは現実的ではありません。当社はそのための管理の仕組みをご用意しています。

当社は非常用トイレをはじめとする防災備蓄品を扱っており、備蓄数量の算定のご相談も承っています。自社の人数で数えると、どの品目がいくつ要るかは、算定で出せます。

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