期限が切れた非常食・水・携帯トイレは会社のごみで、許可を持つ業者に処理を頼みます。家庭ごみや地域の資源回収には出せません。中身の食品は「事業系一般廃棄物」、ペットボトルや袋などのプラスチックは「産業廃棄物」と2つに分かれ、頼む先と手続きも分かれます。100人・3日分を一度に買っていれば、水だけで約900kgが同じ年に出ます。期限が来る前に、量と頼む先を決めておきます。

BCP対策で備蓄をそろえて数年たち、「期限が切れた分は、どこに出せばいいのか」と手が止まった総務の方に向けた記事です。期限の前に配って食べてもらう方法はローリングストックの記事で扱いました。ここでは、配りきれなかった分や、配れない品目をどう処分するかを、東京都の資料と自治体の公表している案内から整理します。

根拠の資料|オフィスのごみは「事業系一般廃棄物」と「産業廃棄物」の2つ

出発点は廃棄物処理法第3条です。「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない」。備蓄品は会社が業務のために買った物なので、捨てるときは会社のごみになります。

資料書いていること
東京都環境局「3Rガイドライン オフィス・商業施設等向け」2024年3月 3ページ家庭からの廃棄物はすべて区市町村が処理する家庭系一般廃棄物。オフィスビル等からの廃棄物は、事業系一般廃棄物(紙類、食品廃棄物、割り箸など)は一般廃棄物処理業者に、産業廃棄物(廃プラスチック、金属くず、廃油など)は産業廃棄物処理業者に処理委託
同 6ページ(20種類の産業廃棄物)廃プラスチック類・金属くず・ガラスくずなどは「あらゆる事業活動に伴うもの」。動植物性残さ(食品のくず)が産業廃棄物になるのは食料品製造業などに限られ、それ以外の業種では事業系一般廃棄物
同 4ページ事業系一般廃棄物の分別方法や回収方法は区市町村によって異なるので、所在地の区市町村で確認する
東京都環境局 産業廃棄物対策課「産業廃棄物の適正処理について」自ら処理できない産業廃棄物は、許可を持った産業廃棄物処理業者に委託する(法第12条第5項)。収集運搬業者・処分業者それぞれと書面で契約し、許可証を添付。引き渡しのときにマニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付し、紙なら5年間保存

品目ごとの当てはめは、京都市の産廃Q&Aが具体的です。スーパーの売れ残りの食料品は、小売業から出る固形のものなら事業系一般廃棄物で、「容器にトレイを使用している場合、産業廃棄物(廃プラスチック類)に該当します」(Q2-2-12)。従業員が持ち込んだ弁当の容器も事業系廃棄物で、プラスチック製の容器は産業廃棄物です(Q2-2-5)。食べ物の中身と、それを包むプラスチックで、区分が分かれるということです。

前提の切り分け|備蓄品を中身と容器に分けて考える

上の資料を、オフィスの備蓄品に当てはめると次のようになります。食料品製造業などではない、一般的な事業所の場合です。

備蓄品中身容器・袋
水(ペットボトル)水(扱いは自治体と委託先に確かめる)ペットボトル=廃プラスチック類(産業廃棄物)
主食(アルファ化米・パンの缶詰など)食品=事業系一般廃棄物袋=廃プラスチック類、缶=金属くず(いずれも産業廃棄物)
未使用の携帯トイレ凝固剤・吸水シート袋=プラスチック。区分は下の「つまずく点」の3を参照

この表は、東京都と京都市の分類を備蓄品に当てはめた当社の整理です。最終的にどの区分で出すかは、所在地の区市町村と、委託する業者に確かめてください。区分が2つにまたがるので、頼む先も「一般廃棄物の許可を持つ業者」と「産業廃棄物の許可を持つ業者」の2つになりえます。1社が両方の許可を持っていることもあるので、見積もりのときに聞きます。

数え方|「1年に出る量」ではなく「その年に出る量」で数える

処分の量は、備蓄の必要数と、それをいつ買ったかで決まります。全部を同じ年に買っていれば、全部が同じ年に期限を迎えます。長期保存水の賞味期限は5〜10年(農林水産省の回答)なので、5年ものを一度にそろえた会社は、5年後に全量が一度に出ます。

その年に処分する量=その年に期限を迎える分 − 期限の前に配って食べてもらえた分

期限を迎える分=算定対象人数 × 1日あたりの量 × 日数(同じ年にまとめて買った場合は全量)

日数の置き方も先に決めておきます。内閣府と東京都が示しているのは3日分で、これは最低限そろえる線です。当社では7日分を目標に置いており、3日分から段階的に積み増す会社が多くあります。7日分まで積んだ会社は、入れ替えと処分の量も7日分になります。

計算例|100人と300人で、同じ年にまとめて買った場合

算定対象人数水(3日分)主食(3日分)水(7日分)主食(7日分)
100人900リットル(約900kg)900食2,100リットル(約2,100kg)2,100食
300人2,700リットル(約2,700kg)2,700食6,300リットル(約6,300kg)6,300食
水1人1日3リットル・主食1人1日3食は内閣府ガイドライン参考資料2の目安。重さは水1リットル≒1kgで計算し、容器の重さは含めていない。7日分は当社の置き方

数字の大きさを、区の収集の条件と比べてみます。千代田区は、家庭ごみの収集に支障がないと区が認めるときに限り、排出日量の平均が50kg未満の事業所の事業系ごみを、有料ごみ処理券を貼って出す形で収集しています。100人・3日分の水だけで約900kgです。中身の扱いを別にしても、ふだんのごみと同じ出し方に乗る量ではありません。

人数を正確に数えておくと、処分の量も、入れ替えの年ごとの費用も、買う前に出せます。数の根拠がそろっていれば、購入の稟議と一緒に、何年後にいくら処分の費用がかかるかまで説明できます。

実務でつまずく点

1. 新しい備蓄を納品する業者に、古い分を「ついでに」持って帰ってもらう

入れ替えの日に、納品に来た業者へ古い分を渡したくなります。東京都環境局は、不適正な処理委託の事例の1つ目に「産業廃棄物の許可のない出入りの納品業者等に廃棄物の処理を依頼」を挙げています。同じ資料には「清掃委託業者に廃棄物の処理を任せている」「処分業の許可を持たない収集運搬業者に処分も含めて委託している」も並んでいます。

引き取りを頼むなら、その会社が産業廃棄物の収集運搬業と処分業の許可を持っているか、許可の品目に廃プラスチック類が入っているかを、許可証で確かめます。許可を持つ業者に頼む場合も、書面の契約とマニフェストが要ります。東京都は「リサイクルするので、契約やマニフェストは不要です」と言う業者に注意するよう書いています。

2. 社員に持ち帰ってもらい、家で捨ててもらう

量が多いと、「1人数本ずつ持って帰ってもらえば片づく」と考えがちです。堺市は事業者向けの案内で、産業廃棄物を従業員が自宅に持ち帰り、家庭ごみとして市のごみ収集に出すことは「廃棄物の投棄禁止規定(廃掃法第16条)に抵触するおそれがあります」と書いています。

期限の前に配って食べてもらうことと、捨てるために持ち帰ってもらうことは、分けて考えます。前者は東京都の事業所向けマニュアルも勧めている入れ替えの方法です(ローリングストックは、会社の防災備蓄でもできますか)。期限が切れてから「処分を手伝って」と配るのは、後者に近くなります。

3. 未使用の携帯トイレを、使用済みと同じ出し方で考える

使用済みの携帯トイレは、災害のときに家庭や避難所の分を区市町村が生活ごみと合わせて集める計画があります(会社の分の扱いは使用済みの携帯トイレは、誰が回収してくれますかで整理しました)。ただ、それとは別に、使わないまま期限が来た携帯トイレは、同じ扱いになるとは限りません。

近い例として、京都市は保育所などから出る紙おむつについて、し尿が付着した使用済みのものは事業系一般廃棄物、「し尿が付着していない未使用等の紙おむつが廃棄された場合は、産業廃棄物の廃プラスチック類に該当します」と答えています(Q2-2-9)。携帯トイレについて同じ答えを出した資料は見当たりませんが、袋がプラスチックである以上、未使用の分は産業廃棄物として扱われる可能性があります。区分は断定せず、委託先と区市町村に品目名を伝えて確かめてください。携帯トイレの期限の確かめ方は災害用トイレの使用期限は、どのくらいですかで整理しています。

4. 引き取りの日まで、倉庫の隅に積んでおく

捨てると決めた物を引き取りの日まで置いておく間も、産業廃棄物は保管の基準を守る必要があります。廃棄物処理法施行規則第8条の基準は、周囲に囲いを設けること、縦横それぞれ60cm以上の掲示板に産業廃棄物の保管場所である旨・廃棄物の種類・管理者の連絡先を書くこと、ねずみや害虫が発生しないようにすることなどです(群馬県の排出事業者向けの説明)。東京都の排出事業者向けチェックリストにも、掲示板の設置と囲いのある場所での保管が並んでいます。

もう1つの問題は、置き場所が備蓄倉庫と重なることです。新しい分を先に納品してから古い分を出す順番にすると、引き取りまでの間、倉庫には2回分が入っています。入れ替えの日程は、納品日と引き取り日を同じ週に寄せて組みます。

5. ふだんのごみの契約で、そのまま出せると思い込む

オフィスビルについて、東京都は「各テナントが個別に廃棄物を排出しており、ビルオーナー等の協力がなければ建物単位での分別の徹底がしづらく、保管スペースも限られている」ことを、分別が進みにくい理由に挙げています。ふだんのごみがビルの契約で回収されているのか、自社の契約なのかで、相談する相手が変わります。

自社で契約している場合も、その契約の品目と量に、数百kgの水や数百食の食品が入っているとは限りません。区の収集を使っている会社は、区ごとの条件を確かめます。豊島区は「一度民間業者に委託をした場合は、原則として区の収集を利用することは出来ません」としています。カセットボンベや乾電池も一緒に入れ替えるなら、東京都の資料が保管基準でリチウムイオン電池等の危険なものの分別を挙げているとおり、ほかのごみと混ぜずに出し方を別に聞きます。

社内でどう説明するか

稟議では、処分を「入れ替えのたびに必ず出る費用」として、購入費とは別の行に置きます。言い方の例です。

「期限が切れた備蓄品は会社のごみになり、廃棄物処理法第3条により当社が処理責任を負います。食品は事業系一般廃棄物、ペットボトルや袋は産業廃棄物に当たるため、許可を持つ業者と書面で契約し、マニフェストを交付して処分します。〇年後に期限を迎える量は、水〇リットル・主食〇食です。処分の見積もりを今年のうちに取り、入れ替えの年の予算に購入費と並べて計上します。」

監査や取引先の確認で問われたときに出せるのは、契約書とマニフェストです。紙のマニフェストは5年間の保存が必要なので、備蓄の一覧と同じ場所で管理しておくと、いつ・何を・どれだけ処分したかを後から示せます。

よくある誤解

よくある理解実際
ペットボトルは資源ごみなので、地域の回収に出せる堺市は、従業員が飲んだペットボトルも汚れの有無にかかわらず産業廃棄物(廃プラスチック類)と案内している。会社のペットボトルは家庭の資源回収には出せない
食品なので、全部まとめて一般廃棄物で出せる中身の食品は事業系一般廃棄物でも、袋や缶は産業廃棄物。区分が2つにまたがる
業者に任せれば、あとは業者の責任廃棄物処理法第3条で処理責任は排出した会社にある。書面契約・マニフェストの交付は会社が行う(東京都)
期限が切れた水は、すぐに捨てなければならない農林水産省は、飲料水は賞味期限を過ぎても一律に飲めなくなるものではないとしている。ただし、備蓄の必要数に数えるのは期限内の分
処分は期限が切れてから考えればよい同じ年にまとめて買っていれば、100人・3日分で水約900kgと主食900食が一度に出る。引き取りの手配と置き場所を、期限の前に決めておく

まとめ

  • 期限が切れた備蓄品は会社のごみ。家庭ごみや地域の資源回収には出せない(廃棄物処理法第3条)
  • 中身の食品は事業系一般廃棄物、ペットボトル・袋・缶は産業廃棄物。頼む先と手続きが2つに分かれうる
  • 産業廃棄物は、許可を持つ収集運搬業者・処分業者それぞれと書面で契約し、マニフェストを交付する。許可のない納品業者に「ついでに」渡さない
  • 未使用の携帯トイレは、使用済みと区分が変わる可能性がある。品目名を伝えて委託先と区市町村に確かめる
  • 同じ年にまとめて買うと、処分も同じ年にまとめて来る。量と引き取り日を、期限の前に決めておく

この記事は東京都と自治体の公表資料にもとづく一般的な整理です。廃棄物の区分と出し方は区市町村や品目の状態で変わるため、実際に出す前に、所在地の区市町村の清掃担当と委託先の業者に確かめてください。

この記事の論点だけでも、期限を迎える年と量、中身と容器の区分、許可を持つ委託先、契約書とマニフェスト、引き取りまでの置き場所と、確かめることが5つあり、品目と拠点の数だけ繰り返します。備蓄は人の命に関わるので、入れ替えの途中で数が欠ける日を1日も作れず、これを担当者1人が覚えて回し続けるのは現実的ではありません。当社はそのための管理の仕組みをご用意しています。

当社は非常用トイレをはじめとする防災備蓄品を扱っており、備蓄数量の算定のご相談も承っています。自社の人数で数えると、どの品目がいくつ要るかは、算定で出せます。

この記事の出典

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