防災備蓄の予算を、社内でどう通せばいいですか。BCP対策の稟議で、金額より先に決める3つのこと

金額から書き始めると通りません。先に決めるのは、出す先・出す時期・数の根拠の3つです。国の資料は、備蓄を含む事前対策の予算確保を総務の備品購入ではなく「経営レベルの戦略的活動」の一工程として書いています。決めるのは経営者、時期は次年度予算の検討と連動、そして金額の前に置くのは数量の根拠です。この3つがそろっていない稟議は、金額の大小にかかわらず止まります。

目次

根拠の数字

「防災備蓄の予算の通し方」を直接定めた法令はありません。かわりに、事前対策の予算を誰が・いつ・どの手順で確保するものとして扱うかは、国の資料に書かれています。

予算まわりで決まっていること資料の書き方出どころ
予算・資源の確保はBCMの一部「BCP策定や維持・更新、事業継続を実現するための予算・資源の確保、事前対策の実施、(略)などを行う平常時からのマネジメント活動は、事業継続マネジメント(BCM)と呼ばれ、経営レベルの戦略的活動として位置付けられる内閣府「事業継続ガイドライン」1.1章
予算確保は計画の一工程「実施のための担当体制を構築し、予算確保を行い、必要な資源を確保し、調達先・委託先を選定する必要がある」「その実施スケジュールを含め、具体的な『事前対策の実施計画』を策定する」同 5.1.2章
見直しの時期は次年度予算と連動「経営者は、BCMの見直しを、自社の事業戦略や次年度予算を検討する機会と連動して、定期的(年に1回以上)に行う必要がある」同 Ⅶ章
あとで執行を問われる監査の着眼点として「事前対策、訓練、点検等がスケジュール通り実施されているか、予算は適切に執行されているか」「事業継続戦略・対策は有効か、費用対効果は妥当か同 7.2章
決めるのは経営者「BCMの必要性とメリットを理解し、相応の時間と労力、投資が必要であることも理解した上で、BCMの導入を決定し、自社の重要事項として実施させること」同 1.4章
範囲も経営者が判断してよい「BCMの内容は、自社の事業内容、規模等に応じて経営者がその範囲を判断してよい同 1.1章
備蓄そのものは努力義務(東京都)「事業者は、(略)従業者の三日分の飲料水、食糧その他災害時における必要な物資を備蓄するよう努めなければならない東京都帰宅困難者対策条例 第7条第2項
出典:内閣府(防災担当)「事業継続ガイドライン」令和5年3月/東京都「帰宅困難者対策ハンドブック」令和5年3月 43ページ所収の条例条文(2026年9月17日確認)

読み方は1つです。国の手順書では、予算確保は「対策を決めたあと、実施する前」に置かれた工程で、決めるのは経営者です。総務が見積書を集めてから上に相談する順番は、この手順とは逆になっています。

中小企業庁も同じ線を引いています。「中小企業BCP策定運用指針」2.2は「BCPの策定・運用は最重要の経営課題であり、経営者のリーダーシップが不可欠です」とし、役割分担が決まっている会社では各部署からサブリーダーを参画させるよう求めています。備蓄の予算が総務の中だけで議論されている状態は、この想定から外れています。

この話は誰向けか。自社にどう読み替えるか

資料によって対象が違います。自社がどれに当たるかで、稟議に添えられる根拠が変わります。

資料・制度対象拘束力・使いどころ
内閣府「事業継続ガイドライン」令和5年3月規模を問わず全ての企業・組織ガイドライン。罰則はない。予算の手順と決裁者の根拠として使える
中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」中小企業指針。罰則はない。過大・過小の物差しとして使える
東京都帰宅困難者対策条例 第7条第2項都内の事業者努力義務。罰則はないが、条例の条文として引用できる
労働契約法 第5条使用者全般安全配慮義務。備蓄という手段は指定していない(後述)
事業継続力強化計画の認定中小企業者に限る(製造業その他は資本金3億円以下又は従業員300人以下、小売業は5千万円以下又は50人以下など)経済産業大臣の認定。税制措置・低利融資・補助金の加点・損害保険料の割引
出典:各資料。中小企業者の範囲は中小企業等経営強化法第2条第1項(中小企業庁「事業継続力強化計画認定制度の概要」2026年7月17日更新による)

ここで分かれ目になるのが、自社が中小企業者に当たるかどうかです。当たる場合は、稟議に外部の認定を添えるという選択肢が増えます。当たらない場合は、社内の資料だけで組み立てることになります。どちらであっても、上の表の内閣府ガイドラインは規模を問わず対象なので、決裁者と時期の根拠はそのまま使えます。

稟議で数えるのは、金額ではなく数量

予算が通らない原因の多くは、金額の大きさではありません。数量の根拠が、担当者の判断に見えてしまうことです。決裁者から見ると、金額が正しいかどうかは判断できませんが、数がどこから来たのかは判断できます。だから稟議では、金額より先に数量を確定させます。

数量は、次の掛け算で出ます。掛け算に入る値は4つだけです。

算定対象人数 × 1人1日あたりの使用量 × 日数 ×(1+上乗せ分)

このうち算定対象人数は、在籍人数ではありません。東京都の条例Q&Aが示す「発災時及びその直後に職場にいるであろう従業者」で、アルバイトや委託業者の職員を含みます。人数の出し方は従業員100人の会社は、防災備蓄を何人分そろえればいいですかに整理しました。ここを名簿の人数のまま出すと、稟議で最初に崩れます。

日数は「7日目標・3日必須」で書く

日数は掛け算に直接入るため、稟議でも必ず1行を割きます。公表基準は3日分です。内閣府ガイドラインの参考資料2も、東京都条例第7条第2項も3日分を示しています。一方、トイレについては経済産業省が7日分(35回分)を挙げており、品目によって日数の置き方が違います。

当社では、7日分を到達点に置いて提案しています。公表基準の3日分は最低ラインであって、目指す先ではないという考え方です。ただし実際には3日分から段階的に導入する企業のほうが多く、それは妥協ではなく現実的な順序だと考えています。これは公表された基準ではなく当社の置き方です。稟議に書くときは「3日分で完了」ではなく「3日分を第1段階とし、次年度以降に上積みを検討する」とすると、翌年度に議題が残ります。日数の使い分けは防災備蓄は何日分そろえればいいですかにまとめています。

上乗せは、率を掛け合わせずに足す

上乗せには、性質の違うものが2つあります。混ぜて「10%上乗せ」とだけ書かないでください。決裁の場で「何の10%か」を聞かれて答えられないと、そこで止まります。

呼び名何の上乗せか区分
帰宅困難者上乗せ 10%外部の帰宅困難者のための共助分。東京都が「10%程度」を示している公表基準。ただし東京都内の拠点が対象
予備率 20%算定人数の誤差とストレスによる使用回数の増加を見込む分当社の置き方(公表された基準ではありません)
出典:東京都「帰宅困難者対策ハンドブック」令和5年3月/予備率は当社の設計値

この2つは掛け合わせません。1.2×1.1で1.32とするのではなく、1+0.2+0.1で1.3とします。理由は単純で、根拠の違う余裕分を掛け合わせると互いを増幅し、「なぜ1.32なのか」を決裁資料で説明できなくなるからです。

乗せる先は数量で、算定対象人数そのものではありません。人数はヒアリングで確定した値なので、そこに率を掛けると「実在しない人数」が稟議に載ります。またアレルギー対応の特別食と要配慮者用トイレには、上乗せを乗せません。実人数に紐づく品目なので、乗せると「いない人の分」を積むことになります。

計算例:算定対象人数100人と300人

公表基準だけで出せる数量です。金額ではなく、この数量が見積もりと稟議の前提になります。

品目100人・3日100人・7日300人・3日300人・7日
水(3L/人日)900L2,100L2,700L6,300L
主食(3食/人日)900食2,100食2,700食6,300食
毛布(1人1枚)100枚100枚300枚300枚
トイレ使用回数(5回/人日・上乗せなし)1,500回3,500回4,500回10,500回
同・都内拠点(+20%+10%=1.3)1,950回4,550回5,850回13,650回
同・都外拠点(+20%のみ=1.2)1,800回4,200回5,400回12,600回
便器(当初・50人に1基)2基2基6基6基
水3L/日・主食3食/日・毛布1枚は内閣府ガイドライン参考資料2および東京都ハンドブック15ページ。トイレ使用回数5回/日・便器の基数は内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」。7日分=35回分は経済産業省「トイレ備蓄 忘れていませんか」。予備率20%は当社の置き方

太字の行を見てください。日数を3日から7日へ延ばしても、毛布の枚数も便器の基数も 増えていません。日数の掛け算が効くのは消耗品だけです。「7日分にすると倍以上かかる」という決裁の場での反論は、この表で崩せます。費用が何で決まるかは防災備蓄の費用の相場はどのくらいですかに整理しました。

この数量を、稟議の文にするとこうなります。金額欄より前に置く4行です。

算定対象人数100人・都内拠点の場合の書き方
1. 人数の出し方「在籍◯人ではなく、東京都条例Q&Aの『発災時及びその直後に職場にいるであろう従業者』100人。アルバイト・委託業者の職員を含む」
2. 日数の置き方「公表基準の3日分を第1段階として計上。トイレは経済産業省が7日分(35回分)を示しているため品目ごとに分けた。次年度以降に7日分への上積みを検討する」
3. 上乗せの内訳「携帯トイレは1,500回に予備率20%と東京都の共助分10%を足して1,950回。率は掛け合わせず加算。都内拠点のため共助分を計上。特別食と要配慮者用トイレには上乗せを乗せていない」
4. 既設設備の控除「必要な便器2基のうち既設の洋式便器◯基を差し引き、新規は◯基」
◯は自社の数字に置き換えてください

この4行は金額を下げるためのものではありません。数がどこから来たのかを示すためのものです。金額だけの稟議は「高い/安い」の議論になり、根拠を添えた稟議は「合っている/合っていない」の議論になります。後者のほうが通ります。

実務でつまずく点

1. 国が「優先的に」と挙げている対策には、コストが1件も書かれていない

中小企業庁の「事業継続力強化計画策定の手引き」には、対策事例の一覧表があります。各行に「推奨」「コスト」「必要期間」の欄が付いていて、手引き本文は「推奨欄に●が記載されている事例について、対応ができているか確認してください。未対応の場合は優先的に対応することを推奨します」と書いています。

その●が付いた事例は、人命の安全確保・緊急時体制の構築・被害状況の把握と情報共有の3分野で合計16件あります。そして16件すべて、コスト欄に金額が書かれていません。

●が付いている事例(抜粋)コスト欄必要期間
社内の○○や社外の△△を避難場所・安全エリアとする1時間〜
従業員・来訪者に対する避難誘導手順を作成する1週間〜
安否確認に向け、従業員の連絡先リストを作成する1日〜
災害対策本部の構成要員、班の役割を定める1週間〜
災害対策本部の設置基準を決定する1時間〜
誰がなにを把握し、いつまでに誰に伝えるのか、あらかじめ役割分担を取り決める1週間〜
主要な顧客、取引業者の連絡先リストを作成する1週間〜
出典:中小企業庁「事業継続力強化計画策定の手引き」2026年7月17日更新 13〜15ページ。●が付いた事例は全16件で、コスト欄に金額が記載されているものはありません(2026年9月17日確認)

読み替えるとこうなります。国が最優先で挙げている対策は、予算が1円も付かなくても今日から着手できるものばかりです。備蓄品の購入だけが防災対策ではありません。

これは順序の話として効きます。予算が付かない年に何もしないでいると、翌年も同じ状態から説明を始めることになります。費用のかからない16件を先に片づけておくと、翌年の稟議は「何もしていないので買わせてほしい」から「ここまでは自前でやったので、残りが要る」に変わります。後者は通りやすい形です。

2. 「認定を取れば備蓄品が税制優遇される」は外れる

中小企業者には、事業継続力強化計画という制度があります。防災・減災の事前対策の計画を経済産業大臣が認定するもので、中小企業庁は「中小企業のための取り組みやすいBCPと位置づけられます」と説明しています。令和8年8月末時点で、累計103,477件が認定を受けています。

認定を受けると、税制措置・金融支援・補助金の加点などの措置が受けられます。ここで誤解が起きます。税制措置の対象は、備蓄品ではありません。

措置中身備蓄品は対象か
中小企業防災・減災投資促進税制特別償却16%。対象は「機械及び装置(100万円以上)」「器具及び備品(40万円以上)」「建物附属設備(60万円以上)」で、実施要領は「減価償却資産のうち」と限定している対象外。水・食料・便袋のような消耗品は減価償却資産ではない
金融支援日本政策金融公庫による低利融資ほか(別途、各機関の審査が必要)制度上、資金使途の判断は各機関
補助金の加点新事業進出・ものづくり補助金、事業承継・M&A補助金、省力化投資補助金、小規模事業者持続化補助金などで加点備蓄そのものへの補助ではなく、他の申請での加点
損害保険料等の割引損害保険会社等が、認定事業者のリスク実態に応じた保険料の割引を個別に検討する各社の個別判断
出典:中小企業庁「事業継続力強化計画」ページおよび「中小企業防災・減災投資促進税制の概要」「同 実施要領」2026年7月17日更新。税制の対象者は令和9年3月31日までに認定を受けた中小企業者(2026年9月17日確認)

つまり、認定を取っても備蓄品そのものの購入費が安くなるわけではありません。自家発電設備や止水板のような設備投資を同時に計画しているなら税制が効きますが、水と食料と携帯トイレだけを買う計画では効きません。

それでも認定に意味があるとすれば、稟議に添えられる外部の裏づけになるという点です。経済産業大臣の認定を受けた計画に書いてある対策は、社内の誰かの思いつきではありません。また、計画の様式そのものが「事前対策・コスト・必要期間」を書かせる作りになっているため、手引きの様式に沿って書けば、そのまま稟議の骨格になります。

なお、この認定は中小企業者に限られます。従業員300人を超える製造業で、かつ資本金3億円を超える会社は対象になりません。自社が該当するかは、上の「この話は誰向けか」の表で先に確かめてください。

3. 出す時期が、次年度予算の検討とずれている

期中に単発で上げた備蓄の稟議は、金額の大小にかかわらず「来年度の話にしよう」で流れます。流れたあと、翌年度の予算編成の時期には誰も覚えていません。

内閣府ガイドラインは、この点を明示しています。「経営者は、BCMの見直しを、自社の事業戦略や次年度予算を検討する機会と連動して、定期的(年に1回以上)に行う必要がある」。さらに脚注84で「BCMの改善は、企業・組織の事業計画等の企画立案に合わせて実施していくことが重要である。例えば、会社の主な経営サイクル(会計年度・決算期・営業報告など)に合わせて実施することが望ましい」としています。

やることは2つです。自社の予算編成がいつ始まるかを確かめること。そして、その手前に「年1回の見直し」を置くこと。見直しの場を先に作っておけば、備蓄の予算は毎年その場から出ていきます。単発の稟議は毎回ゼロから説明が要りますが、年1回の議題になっていれば前年の続きから話せます。

この「年1回の議題を置く」という上申には、費用がかかりません。予算が要らない上申のほうが先に通ります。順番として、これを1年目に通し、2年目に金額の稟議を出すほうが、いきなり金額を出すより確実です。

4. 決裁の場所が、総務の中で閉じている

備蓄の予算が総務部長までの決裁で完結している会社は少なくありません。ところが国の資料は、この位置づけを取っていません。内閣府はBCMを「経営レベルの戦略的活動」とし、中小企業庁は「最重要の経営課題であり、経営者のリーダーシップが不可欠です」としています。

どこで決裁されるかで、議論の中身が変わります。総務の中で閉じると、備蓄は備品費の一項目として他の備品と金額を比べられます。経営会議に上がると、事業継続の投資として「対策をしない場合の損失」と比べられます。後者の比較のしかたは、中小企業庁の指針5.4が示しています。事前対策なしの累計負担額(C1)と、事前対策を含む総費用(H2)を比べ、C1がH2より大きければ講じるべき、というものです。同じ指針は、過度の対策について「これは行き過ぎです」とも明記しています。

そして、上げ先を変えるだけでは足りません。数量の根拠がないまま経営会議に上げると、今度は経営会議で止まります。正確に数えて、その根拠を紙で示せるようにすると、稟議は「総務の希望」から「会社の必要量」に変わります。正確に数えることが、予算を通すための近道です。担当者が1人でこれを抱えている状態については、防災備蓄の管理は、総務が1人でも回せますかで扱いました。

5. 「努力義務だから」で止まってしまう

決裁の場でよく出る反論です。東京都帰宅困難者対策条例第7条第2項は「備蓄するよう努めなければならない」という書き方で、罰則はありません。この指摘自体は正確です。

ただし、条例に罰則がないことと、企業に何の義務もないことは別です。労働契約法第5条は「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定めています。

この条文は、備蓄という具体的な手段を指定していません。「備蓄が法律で義務づけられている」と書くのは行き過ぎです。条文が求めているのは必要な配慮であって、何をもって配慮とするかは書かれていません。稟議でもそこは正確に扱ってください。

そのうえで、条例の努力義務と労働契約法の配慮義務は、目的が重なっています。東京都の条例が備蓄を求めている理由は、施設内での待機を維持するためです(第7条第2項の条文に「前項に規定する従業者の施設内での待機を維持するために」とあります)。待機させるのは会社の判断であり、待機させる以上、その間の水とトイレは会社が用意することになります。「帰さない」と「備えない」は両立しません。この整理のほうが、罰則の有無を争うより決裁の場で通ります。

社内でどう説明するか

金額の稟議を1本だけ出すのではなく、3段階に分けます。1段目と2段目には費用がかかりません。

段階何を上げるか費用根拠にする原文
1段目年1回の見直しを経営会議の議題に置くこと。時期は次年度予算の検討の手前なし「経営者は、BCMの見直しを、自社の事業戦略や次年度予算を検討する機会と連動して、定期的(年に1回以上)に行う必要がある」(内閣府 Ⅶ章)
2段目費用のかからない対策の実施と、算定対象人数の確定。既設の洋式便器の数え上げもここなし「未対応の場合は優先的に対応することを推奨します」(中小企業庁 手引き)
3段目数量と金額。1段目で作った場に、2段目の結果を添えて出すあり「実施のための担当体制を構築し、予算確保を行い(略)『事前対策の実施計画』を策定する」(内閣府 5.1.2章)
出典:内閣府(防災担当)「事業継続ガイドライン」令和5年3月/中小企業庁「事業継続力強化計画策定の手引き」2026年7月17日更新

通ったあとに問われることも、先に知っておくと書き方が変わります。内閣府ガイドラインは監査の着眼点として「事前対策、訓練、点検等がスケジュール通り実施されているか、予算は適切に執行されているか」「事業継続戦略・対策は有効か、費用対効果は妥当か」を挙げています。翌年に執行状況を聞かれる前提で、初年度の稟議に実施スケジュールを入れておいてください。入れておけば、翌年の稟議は前年の進捗報告から始められます。

満額つかなかったとき

減額されたら、そのまま着手してください。国の資料の言葉がそのまま使えます。内閣府は「多額の出費を伴わなくても一定の対応は可能」「初めから完璧なものを目指して着手に躊躇するのではなく、できることから取組を開始し」と書き、中小企業庁は「事前対策は、貴方の会社自身で調達できる金額の範囲で、先ず行いましょう」と書いています。減額された予算で始めることは、後退ではなく国が推奨している進め方です。

削る順番は先に決めておきます。削るのは人数ではなく品目側です。人数は事実で決まる値なので、ここを削ると「足りない備蓄を、足りていることにする」ことになります。品目の優先順位は防災備蓄で、絶対に必要なものと、そうでもないものはありますかに整理しました。

よくある誤解

よくある理解実際
金額を安くすれば通る止まる原因は金額の大きさより、数量の根拠が担当者の判断に見えること。安くしても根拠がなければ同じ場所で止まる
備蓄の予算は総務の裁量で決まる内閣府はBCMを「経営レベルの戦略的活動」とし、範囲の判断も経営者が行うものとしている。中小企業庁は「最重要の経営課題」と明記
予算が付かない年は、何もできない中小企業庁の手引きが優先的な対応として挙げている16件は、いずれもコスト欄に金額が書かれていない
事業継続力強化計画の認定を取れば、備蓄品が安くなる税制措置の対象は減価償却資産(機械装置100万円以上・器具備品40万円以上・建物附属設備60万円以上)。消耗品である備蓄品は含まれない
認定はどの会社でも取れる中小企業者に限られる。製造業その他は資本金3億円以下または従業員300人以下など、業種ごとに範囲が決まっている
努力義務だから、予算を付ける根拠がない東京都条例第7条第2項は努力義務で罰則はない。ただし同項は「施設内での待機を維持するために」備蓄を求めており、待機させる判断と備えない判断は両立しない
予備率と共助分は掛け合わせて1.32倍にする掛け合わせず加算して1.3倍。根拠の違う余裕分を掛けると、なぜその倍率なのかを決裁資料で説明できなくなる
7日分にすると予算が倍以上になる日数の掛け算が効くのは消耗品だけ。毛布は1人1枚のまま、便器の基数も日数では増えない

まとめ

  • 金額より先に決めるのは、出す先(経営会議)・出す時期(次年度予算の検討の手前)・数の根拠の3つ
  • 国の手順では、予算確保は「対策を決めたあと、実施する前」の工程で、決めるのは経営者。見積書を集めてから相談する順番は、この手順と逆
  • 稟議に載せるのは金額ではなく数量。人数・日数・上乗せ・既設控除の4行を金額欄より前に置く
  • 上乗せは掛け合わせずに足す(1+0.2+0.1=1.3)。乗せる先は人数ではなく数量。東京都の共助分10%は都内の拠点が対象
  • 中小企業庁の手引きが優先的な対応として挙げる16件は、いずれもコスト欄に金額がない。予算ゼロの年でも進められる
  • 事業継続力強化計画の税制措置は設備向け。備蓄品そのものは対象外だが、認定は稟議に添える外部の裏づけになる
  • 減額されたら着手する。国が「できることから取組を開始し」と推奨している。削るのは人数ではなく品目側

株式会社MOSHIMO HACKは、企業の防災備蓄の算定と、備蓄品の管理を代行しています。

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この記事を書いた人

株式会社MOSHIMO HACKは、非常用トイレをはじめとする防災用品の製造・販売と、企業の備蓄数量の算定を行っています。代表の寺澤は災害備蓄管理士(一般社団法人 防災安全協会)および防災士。「作っている側」と「資格を持って算定している側」の両方から、企業の備蓄について書いています。

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