防災備蓄は何日分そろえればいいですか。3日分と7日分はBCP対策でどう使い分けますか

企業の備蓄は3日分が出発点です。ただし「3日分」は、すべての品目に共通の答えではありません。国が数量まで示しているのは水・主食・毛布の3品目だけで、それ以外は「物資ごとに必要量を算定」とされています。災害用トイレについては、経済産業省が7日分(35回分)を必要量としています。3日か7日かではなく、品目ごとに分けるのが正解です。

目次

根拠の数字

企業の備蓄日数について、国は内閣府のガイドラインで目安を示しています。2026年1月の改定で名称が「災害発生時における大規模な帰宅困難者等の発生への対策に関するガイドライン」に変わりましたが、備蓄量の考え方は参考資料2にまとめられており、内容は据え置かれています。

その参考資料2を、原文のまま引用します。

一斉帰宅抑制における従業員等のための備蓄の考え方(抜粋)

3 3日分の備蓄量の目安
(1)水については、1人当たり1日3リットル、計9リットル
(2)主食については、1人当たり1日3食、計9食
(3)毛布については、1人当たり1枚
(4)その他の品目については、物資ごとに必要量を算定

ここで見落とされやすいのが(4)です。「3日分」という日数が数量とセットで示されているのは(1)から(3)までで、簡易トイレ・衛生用品・敷物・救急医療薬品類といった残りの品目には、国は数量も日数も与えていません。「物資ごとに必要量を算定」と書かれているだけです。

その「算定」の材料として、トイレには別の資料があります。経済産業省は「1人あたり35回分(7日分)の災害時トイレの備蓄が必要です」としています。1日5回×7日という計算です。

並べると、こうなります。

品目日数の目安1人当たりの数量示している資料
3日分1日3L・計9L内閣府ガイドライン 参考資料2
主食3日分1日3食・計9食
毛布日数に比例しない1枚
その他の品目示されていない「物資ごとに必要量を算定」
災害用トイレ7日分35回分(1日5回×7日)経済産業省「トイレ備蓄 忘れていませんか」

内閣府と経済産業省で日数が違って見えますが、矛盾ではありません。内閣府は水・主食・毛布に3日分という目安を与え、トイレを含むその他は各自で算定せよとしています。経済産業省は、そのトイレについて7日分という数字を出しています。役割が違うだけで、同じ品目について違うことを言っているわけではありません。

この目安は誰向けか。自社にどう読み替えるか

「何日分」という数字は、資料によって対象が違います。数字だけを拾うと、家庭向けの呼びかけを会社に持ち込むことになります。主な資料を対象ごとに整理します。

資料誰に向けたものか日数
内閣府ガイドライン 参考資料2被災の可能性がある全ての事業者(官公庁を含む)。対象は雇用の形態を問わず事業所内で勤務する全従業員3日分
東京都 帰宅困難者対策条例 第7条第2項都内の事業者3日分(努力義務・罰則なし)
南海トラフ地震防災対策推進基本計画推進地域の被災地域最低でも3日間、可能な限り1週間分程度
内閣府「自然災害への備えは万全ですか?」各家庭最低3日間、できれば一週間
経済産業省「トイレ備蓄 忘れていませんか」一般(トイレのみ)7日分(35回分)

全国の企業に共通する目安は、いまも3日分です。「1週間分」を見かけたときは、それが家庭向けなのか、南海トラフ地震の推進地域に限った話なのかを先に確認してください。

なぜ3日なのか。復旧までの日数ではない

3日という日数の理由は、ガイドラインにはっきり書かれています。

発災後 72 時間(3日間)は人命救助に重要な期間である。そのため、従業員等の一斉帰宅が救助・救出活動の妨げとならないよう、発災後3日間は企業等が従業員等を施設内に待機させる必要がある。このことから、備蓄量の目安は3日分とする。

順番に注意してください。先に「3日間は社内に待機させる」が決まり、その結果として「だから3日分」が出てきています。「3日あればライフラインが復旧するから」でも「3日で帰宅できるようになるから」でもありません。救助活動を妨げないために社内に留まる日数が、そのまま備蓄の日数になっているという構造です。

この理解は、社内説明のときに効きます。備蓄は福利厚生ではなく、一斉帰宅を抑制するための措置だという位置づけになるからです。

数え方:何を日数に掛けるのか

必要量は「1日当たりの量 × 日数 × 対象人数」で出します。ただし、この式に乗る品目と、乗らない品目があります。ここを分けずに全体へ日数を掛けると、必ず過大になります。

区分品目何で決まるか
日数に比例する水、主食、災害用トイレ(便袋)、トイレットペーパー等の衛生用品1日当たりの量 × 日数 × 人数
日数に比例しない毛布、敷物、携帯ラジオ、懐中電灯、救急医療薬品類人数、または拠点ごとの必要数
日数に比例しない便器の基数人数(発災当初は約50人に1基)

1日当たりの量は、水が3リットル、主食が3食、トイレの使用回数が5回です。掛ける相手の対象人数は在籍人数ではありません。発災時に職場にいるであろう人数で数えます。数え方は従業員100人の会社は、防災備蓄を何人分そろえればいいですかで扱っています。

もうひとつ、外部の帰宅困難者のための10%程度の上乗せがあります。これは日数ではなく量に掛けます。日数を7日に伸ばしたからといって、上乗せ率が変わるわけではありません。

計算例:従業員100人の会社と、従業員300人の会社

3日分と7日分を並べます。10%の上乗せは含めていません。

品目計算式100人・3日分100人・7日分300人・3日分300人・7日分
3L × 日数 × 人数900L2,100L2,700L6,300L
 2リットルペットボトル水 ÷ 2450本1,050本1,350本3,150本
 水の重さ1L=1kg900kg2,100kg2,700kg6,300kg
主食3食 × 日数 × 人数900食2,100食2,700食6,300食
毛布1枚 × 人数100枚100枚300枚300枚
便器人数 ÷ 502基2基6基6基
携帯トイレ(便袋)5回 × 日数 × 人数1,500回分3,500回分4,500回分10,500回分

3日分から7日分にすると、日数に比例する品目だけが約2.33倍になります。毛布と便器は同じままです。「7日分にすると全部が2.33倍」という見積もりは、この2行の分だけ多く見積もっていることになります。

実務でつまずく5つの点

1. 全員を同じ日数にしなくていい

「3日分か7日分か」を全社一律で決めようとすると、そこで止まります。国の機関は、自分たちの備蓄を一律にしていません。

南海トラフ地震防災対策推進基本計画には、各府省庁の取組の進捗を測る指標が並んでいます。そのなかに、外務省の指標としてこう書かれています。

参集要員の1週間分、参集要員以外の職員等の3日分程度の緊急食料品、飲料水、簡易トイレの備蓄品確保率

残って対応にあたる人は1週間分、それ以外は3日分。同じ組織のなかで日数を2段に分けています。企業に置き換えれば、復旧対応やBCPの初動要員として社内に残る人と、状況が落ち着いたら帰宅する人の区別です。

予算が足りないときに最初に検討すべきなのは、人数を削ることでも品目を削ることでもなく、この2段構えです。全員分を7日分そろえるのに比べ、増えるのは初動要員の人数分だけで済みます。しかも「国の機関が同じ設計をしている」という説明が付きます。

2. 「3日分」は、3日で帰宅できるという意味ではない

ガイドラインは、帰宅が可能になる状況として次の3つを挙げています。

  • 発災から72時間(3日間)の人命救助に重要な期間が経過した後
  • 発災直後の混乱がある程度収拾し、移動しても応急活動への支障や群集事故等の二次災害をもたらさない
  • 通行可能な帰宅経路又は鉄道が運転再開するなど公共交通機関を基本とする移動手段が確保されている

3つ目が入っていることに注意してください。72時間が過ぎても、移動手段がなければ帰宅は始まりません。ガイドラインには、次の2つの注記も付いています。

  • 「4日目以降でないと帰宅させてはならないというものではない。反対に、4日目以降も応急活動が継続している場合もあり得る
  • 「発災後72時間(3日間)は特に人命救助に重要な期間であるが、救助活動に時間的区切りはない

つまり4日目は区切りではなく目途です。3日分は「3日で終わる」という想定ではなく、「少なくとも3日は持たせる」という最低線として置かれています。ガイドライン自身も「企業等は、震災の影響の長期化に備え、3日分以上の備蓄についても検討していく」としています。

あわせて押さえておくと、一時滞在施設の設置期間は発災から72時間(最大3日間)程度まで、避難所は発災から2週間程度までと定義されています。3日が過ぎた時点で行き先が自動的に確保されるわけではありません。

3. 日数を伸ばすと、先に効いてくるのは予算ではなく床

100人分の水は、3日分で900kg、7日分で2,100kgです。300人なら6,300kgになります。重さが2.33倍になるということは、置き場所の条件も2.33倍で効いてきます。

建築基準法施行令が事務室の床に見込んでいる重さは1平方メートルあたり約296kgです。水900kgを高さ1mに積むと1平方メートルあたり約300kgで、この時点ですでに同じ水準に達します。7日分にするなら、面積を広げるか、積む高さを下げるか、置き場所を分けるかのいずれかが必要です。詳しい測り方は防災備蓄の倉庫はどのくらいの広さが必要ですかで扱っています。

日数を決める前に、置ける量の上限を先に測っておくと、通らない案を作らずに済みます。

4. トイレの「7日分」は枚数の話で、便器は増えない

経済産業省の35回分は、1人が7日間で使う便袋の枚数です。100人なら3,500回分になります。ここで起きやすいのが、枚数だけをそろえて、使う場所を数えていないという状態です。

携帯トイレは既存の洋式便器に付けて使うため、同時に使える数は便器の基数で頭打ちになります。そして便器の基数は人数で決まり、日数を伸ばしても増えません。100人なら発災当初で2基、長期化する場合で5基が目安です。基数の数え方は災害用トイレは何人に1基必要ですかで扱っています。

もうひとつ、枚数が増えるとそのまま増えるのが使用済みの便袋です。100人・7日分なら3,500枚が出ます。ゴミ収集は災害直後には来ないため、回収されるまで社内に置く場所が要ります。この置き場所は備蓄倉庫とは別に確保します。日数を7日にするという判断は、保管場所を2倍以上にするという判断とセットです。

5. 「その他の品目」には、国が数量を示していない

参考資料2の(4)「その他の品目については、物資ごとに必要量を算定」に該当するのは、次のものです。

  • 簡易トイレ、衛生用品(トイレットペーパー等)
  • 敷物(ビニールシート等)
  • 携帯ラジオ、懐中電灯、乾電池
  • 救急医療薬品類

品目の例示はありますが、数量の目安はありません。このうちトイレには経済産業省の35回分がありますが、トイレットペーパーや乾電池には対応する公的な数字が見当たりません。

ここは「国の基準どおりにそろえました」では説明が終わらない領域です。自社で根拠を作る必要があります。作り方は難しくありません。1日当たりの使用量を置き、日数と人数を掛け、その1日当たりの数字をどう置いたかを1行書いておく。数量だけを示すのではなく、計算式を残しておくことが、後から見直すときにも監査で聞かれたときにも効きます。

社内でどう説明するか

稟議や監査で日数の根拠を聞かれたときは、次の3点を1枚にまとめておくと話が早く終わります。

説明する項目書き方の例
基本の日数内閣府ガイドライン参考資料2「備蓄量の目安は3日分とする」に準拠。根拠は発災後72時間が人命救助に重要な期間であり、一斉帰宅を抑制するため
日数を分ける場合初動要員は7日分、その他は3日分。南海トラフ地震防災対策推進基本計画において、外務省が「参集要員の1週間分、参集要員以外の職員等の3日分程度」を指標としているのと同じ考え方
品目で日数が違う理由同参考資料が数量を示すのは水・主食・毛布のみで、その他は「物資ごとに必要量を算定」とされている。災害用トイレは経済産業省が7日分(35回分)を必要量としている

資料はA4一枚、白黒印刷で読めること、出典が載っていることの3つを満たしていれば足ります。日数を変更したときは、この1枚を差し替えるだけで済みます。

よくある誤解

よくある理解実際
備蓄は1週間分が新しい基準になった企業向けの全国共通の目安は3日分のままです。「1週間」の出どころは、家庭向けの呼びかけと、南海トラフ地震の推進地域における「可能な限り1週間分程度」です
3日分の備蓄は義務東京都帰宅困難者対策条例 第7条第2項は努力義務で、罰則はありません。備蓄量の目安にも法的拘束力はないと都が明言しています
7日分にすれば、必要数はすべて2.33倍2.33倍になるのは日数に比例する品目だけです。毛布・便器・ラジオ・懐中電灯は人数で決まるため増えません
4日目になったら社員を帰宅させる国は「4日目以降でないと帰宅させてはならないというものではない」「反対に、4日目以降も応急活動が継続している場合もあり得る」としています。日付ではなく、移動手段が確保されているかで判断します
日数を伸ばしても倉庫は同じでよい水は1リットルが1kgです。100人分なら3日分で900kg、7日分で2,100kgになります。置き場所と床の条件が先に上限を作ります

まとめ

  • 企業向けの目安は3日分。ただし国が数量を示しているのは水(9L)・主食(9食)・毛布(1枚)の3品目だけで、その他は「物資ごとに必要量を算定」とされている
  • 災害用トイレは経済産業省が7日分(35回分)。内閣府の3日分と矛盾しているのではなく、内閣府が数量を示していない品目を経済産業省が埋めている
  • 3日という日数は、復旧までの日数ではない。発災後72時間が人命救助に重要な期間であり、一斉帰宅を抑制するために社内に留まる日数がそのまま備蓄日数になっている
  • 全員を同じ日数にしなくてよい。外務省は「参集要員の1週間分、参集要員以外の職員等の3日分程度」を指標としている。予算が足りないときに最初に検討する設計
  • 日数に比例するのは水・主食・トイレ・衛生用品だけ。毛布と便器は人数で決まる。全品目に日数を掛けると過大な見積もりになる

この記事の出典

当社は非常用トイレをはじめとする防災備蓄品を扱っており、備蓄数量の算定と保管計画についてのご相談も承っています。

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この記事を書いた人

株式会社MOSHIMO HACKは、非常用トイレをはじめとする防災用品の製造・販売と、企業の備蓄数量の算定を行っています。代表の寺澤は災害備蓄管理士(一般社団法人 防災安全協会)および防災士。「作っている側」と「資格を持って算定している側」の両方から、企業の備蓄について書いています。

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