会社の防災備蓄で、非常食は1人1日何食で計算しますか。BCP対策の「3食」が指しているもの

1人1日3食で計算します。3日分なら1人9食です。ただし、この「3食」が指しているのは主食の数であって、食事1回分の中身ではありません。国と東京都が数量まで示しているのは水・主食・毛布の3品目だけで、おかずは「企業ごとに検討」とされています。9食そろえた状態は、算定の完了ではなく出発点です。

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根拠の数字

「1日3食」は、内閣府(防災担当)のガイドラインの参考資料2「一斉帰宅抑制における従業員等のための備蓄の考え方」に書かれています。東京都の「帰宅困難者対策ハンドブック」も、同じ数字を同じ形で載せています。

品目1人当たりの3日分の目安
1日3リットル、計9リットル
主食1日3食、計9食
毛布1枚
その他の品目数量の目安なし(原文は「物資ごとに必要量を算定」)
出典:内閣府(防災担当)「災害発生時における大規模な帰宅困難者等の発生への対策に関するガイドライン」令和8年1月改定 参考資料2「3 3日分の備蓄量の目安」/東京都「帰宅困難者対策ハンドブック」令和5年3月 15ページ

数量が示されているのは、この3品目だけです。そして「主食」が何を指すのかも、同じ資料に書いてあります。注目すべきは、おかずがどこに書かれているかです。

区分資料のどこに書かれているか挙がっているもの
主食「4 備蓄品目の例示(2)主食」
=数量の目安がある本体
アルファ化米、クラッカー、乾パン、カップ麺
副食(おかず)「<備考>①上記品目に加えて、事業継続等の要素も加味し、企業ごとに必要な備蓄品を検討していくことが望ましい」の例
=数量の目安がない備考欄
非常用発電機、燃料、工具類、調理器具(携帯用ガスコンロ、鍋等)、副食(缶詰等)、ヘルメット、軍手、自転車、地図
出典:同参考資料2「4 備蓄品目の例示」および「(備考)」/東京都「帰宅困難者対策ハンドブック」15ページ「<備考>」

おかずは、備蓄品目の本体ではなく、備考欄の例のひとつとして、発電機や工具や自転車と同じ行に並んでいます。「3食」を9食と掛け算しただけの備蓄は、資料どおりに読めば主食だけの状態です。

この目安は誰向けか。自社にどう読み替えるか

参考資料2は、対象を明記しています。対象となる企業等は「大規模地震発生により被災の可能性がある国、都道府県、市区町村等の官公庁を含む全ての事業者」、対象となる従業員等は「雇用の形態(正規、非正規)を問わず、事業所内で勤務する全従業員」です。東京都に事業所がない会社でも、そのまま読める形で書かれています。

ただし数量に法的拘束力はありません。東京都の条例Q&Aは「3日分の備蓄量は目安であり、法的拘束力を持つものではありませんが、参考にしていただき、備蓄をお願いいたします」と答えています。9食は義務ではなく、社内で説明できる根拠として使う数字です。

では「9食で足りているのか」は、どこで確かめればよいのか。企業向けの基準はありません。公的なものさしとして使えるのは、厚生労働省が東日本大震災のときに示した避難所向けの栄養の参照量だけです。

エネルギー・栄養素被災後3ヶ月までの当面の目標
(平成23年4月21日)
被災後3ヶ月以降
(平成23年6月14日)
エネルギー2,000kcal1,800〜2,200kcal
たんぱく質55g55g以上
ビタミンB11.1mg0.9mg以上
ビタミンB21.2mg1.0mg以上
ビタミンC100mg80mg以上
いずれも1歳以上、1人1日当たり。出典:厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室 事務連絡「避難所における食事提供の計画・評価のために当面の目標とする栄養の参照量について」平成23年4月21日/同「避難所における食事提供に係る適切な栄養管理の実施について」平成23年6月14日

前者には対象特性別の参考値も付いていて、成人(15〜69歳)は1人1日2,100kcal、たんぱく質55gです。会社の備蓄が想定するのは、ほぼこの区分の人たちです。

この参照量は企業向けの基準ではありません。岩手県・宮城県・福島県と盛岡市・仙台市・郡山市・いわき市の健康づくり施策主管部局に宛てた事務連絡で、避難所での食事提供を計画・評価するためのものです。会社に課された数字ではありません。それでも、9食の中身を確かめる公的なものさしは、いまのところこれ以外にありません。本記事でも、基準としてではなく検算の物差しとして使っています。

何を1と数えるのか

式そのものは単純です。

必要な食数 = 算定人数 × 3食 × 日数

この式で間違えやすいのは、掛ける数のほうです。

もうひとつ、資料には書かれていない穴があります。1食の重さは製品ごとに違うということです。同じ「1食」でも、中身の量は製品を決めるまで確定しません。発注数は食数で数え、栄養は重量で確かめる。この2段構えにしておくと、あとで数え直さずに済みます。

計算例

算定人数を100人と300人として、必要な食数を出します。東京都は外部の帰宅困難者のための共助分として10%程度の上乗せを示しているので、その前後を並べました。

条件計算式100人300人
3日分人数 × 3食 × 3日900食2,700食
3日分+10%上記 × 1.1990食2,970食
7日分人数 × 3食 × 7日2,100食6,300食
7日分+10%上記 × 1.12,310食6,930食

次に、その1日分(3食)に何が入っているのかを見ます。内閣府が主食の例として挙げている4つについて、文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」の数値を使いました。1食の重さは製品によって違うため、ここでは可食部100グラムを1食と置いて計算しています。実際に買う製品の重量に置き換えれば、数字は変わります。

主食(成分表の食品名)100g当たり
エネルギー
100g当たり
たんぱく質
3食分成人の参照量
2,100kcalに対して
アルファ化米 一般用358kcal6.0g1,074kcal/18.0g約51%
乾パン386kcal9.5g1,158kcal/28.5g約55%
クラッカー(ソーダクラッカー)421kcal10.4g1,263kcal/31.2g約60%
中華スタイル即席カップめん 油揚げ 塩味 乾(添付調味料等を含むもの)422kcal10.9g1,266kcal/32.7g約60%
出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」第2章(食品番号 01110/01030/15094/01193)。参照量は厚生労働省 平成23年4月21日事務連絡の対象特性別(15〜69歳)2,100kcal・たんぱく質55g

主食を9食そろえた会社は、エネルギーで5〜6割、たんぱく質で3〜6割のところに立っています。これは備蓄が失敗しているという意味ではありません。資料が最初からそういう作りになっている、という意味です。残りをどう埋めるかが、備考欄の「企業ごとに検討」です。

なお、4つのうちどれを選ぶかは、栄養だけで決まりません。食物アレルギーのある社員がいる場合、主食の選び方そのものが対応策になります。食物アレルギーのある社員の分は、どう備えればいいですかで、内閣府が挙げる「アルファー米等の白米」に寄せる設計を扱っています。

実務でつまずく5つの点

1. 「3食」を、1日分の食事だと思っている

いちばん多い読み違いです。「1日3食」と書いてあれば、朝・昼・晩の3回分がそろうように読めます。実際に数量の目安が付いているのは主食だけで、3食分そろえても成人の参照量の半分程度です。

この読み違いは、備蓄が完了したという判断に直結します。「9食×人数を発注した、これで条例の目安はクリア」で止まってしまう。目安はクリアしています。ただし、そこに食事の中身は入っていません。稟議を出す前にこの一行を足しておくかどうかで、翌年の追加予算が要るかどうかが変わります。

2. おかずが、算定表から落ちる

副食(缶詰等)は、備考欄に例として書かれているだけで、数量の目安がありません。算定表は数量の目安がある品目から作られるので、目安のない品目は表に行が立ちません。行が無ければ発注もされません。

対策は単純で、算定表に「数量の目安なし・自社判断」という行を先に作っておくことです。当社では、主食と同じ食数(人数×3食×日数)を上限、その半分を下限として提示し、予算に合わせて社内で決めていただく形を取っています。これは公表された基準ではなく、当社の置き方です。

3. 主食の例示4つのうち2つは、水か湯が要る

アルファ化米とカップ麺は、水やお湯を入れて戻します。乾パンとクラッカーはそのまま食べられます。同じ「主食1食」でも、水の要不要が分かれています。

そして、備蓄量の目安に示された水は「1日3リットル」で、品目の例示では「ペットボトル入り飲料水」とされています。戻し水を別に見込むという記述は、参考資料2にも東京都のハンドブックにも置かれていません。アルファ化米を選ぶなら、戻し水を9リットルの内側から出すのか、外に別枠で積むのかを自社で決める必要があります。3リットルが何の水を指しているかは会社の防災備蓄で、水は1人1日何リットル必要ですかで扱っています。

4. 期限切れの備蓄は「あるから配る」ができない

入れ替えが遅れて賞味期限が切れた食料が倉庫にある、という状態はよく起こります。社内向けであれば自社の判断ですが、帰宅困難者を受け入れる場合は扱いが変わります。

ガイドラインは「備蓄食料の提供については、賞味期限を確認するとともに、賞味期限切れの備蓄食料の提供については慎重に検討し、提供する場合には、その旨の事実を告げること」としています。配る前に確認する手間と、告げる手順が要るということです。食数の計算には、期限切れの在庫は入れられません。棚に何食あるかではなく、期限内が何食あるかで数えてください。

5. 「なぜ3食なのか」と聞かれると、出典が出せない

稟議や監査で必ず出る質問です。水の「1日3リットル」については、東京都の条例Q&Aに根拠を説明する項目があります。総務省消防庁の目安(「地震防災マニュアル」等)と東京都水道局の成人基本水量が3リットルであることを踏まえた、という説明です。

一方、主食の「1日3食」について、同じQ&Aに対応する項目は置かれていません。説明できるのは「内閣府のガイドラインと東京都の実施計画が目安として示している数字である」というところまでです。追及されたときに、無い根拠を作らないでください。目安であること、法的拘束力がないこと、それでも国と都が同じ数字を示していることの3点で通します。

社内でどう説明するか

稟議書に書く順番は、次の3行で足ります。

  1. 算定人数 × 3食 × 日数で、必要食数は◯食。根拠は内閣府ガイドライン参考資料2と東京都帰宅困難者対策実施計画(目安・法的拘束力なし)
  2. この◯食は主食のみ。副食は同資料の備考欄で「企業ごとに検討」とされており、数量の目安がない
  3. 主食だけの場合、成人の参照量2,100kcalに対して5〜6割。不足分をどこまで埋めるかは、予算に応じた自社判断

予算が削られたときに、どこから落とすか。当社では、人数と主食の食数は最後まで削らないことをお勧めしています。人数は事実で決まる値で、主食は国と都が数量を示している唯一の食料だからです。先に調整するのは副食の品数と日数です。品目ごとの優先順位は防災備蓄で、絶対に必要なものと、そうでもないものはありますかで整理しています。

よくある誤解

誤解実際
1日3食そろえれば、1日分の食事になる目安が付いているのは主食だけ。副食は備考欄で「企業ごとに検討」とされ、数量の目安がない
9食は法律で決まった数字だ東京都のQ&Aは「目安であり、法的拘束力を持つものではありません」と明記している
在籍人数 × 3食 × 3日で出せばよい掛けるのは在籍人数ではなく「発災時及びその直後に職場にいるであろう従業者」
非常食は全部そのまま食べられる内閣府が例示する4つのうち、アルファ化米とカップ麺は水か湯が要る
倉庫にある食数がそのまま備蓄数帰宅困難者に配るなら、賞味期限切れは「慎重に検討し、提供する場合はその旨の事実を告げる」対象。期限内の数で数える
栄養まで会社が責任を負う基準がある企業向けの栄養基準はない。厚生労働省の参照量は避難所向けの事務連絡で、検算の物差しとして使うもの

まとめ

  • 1人1日3食、3日分なら9食。内閣府のガイドラインと東京都の実施計画が同じ数字を示している
  • 「3食」は主食の数。副食(缶詰等)は同じ資料の備考欄にあり、数量の目安がない
  • 主食だけでは、成人の参照量2,100kcalに対して5〜6割。残りをどう埋めるかが自社判断の部分
  • 掛ける人数は在籍人数ではない。発災時に職場にいるであろう人数に、共助分の10%程度を足す
  • 数えるのは期限内の在庫だけ。期限切れは、配るときに確認と告知の手順が要る

株式会社MOSHIMO HACKは、企業の防災備蓄の算定と、備蓄品の管理を代行しています。

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この記事を書いた人

株式会社MOSHIMO HACKは、非常用トイレをはじめとする防災用品の製造・販売と、企業の備蓄数量の算定を行っています。代表の寺澤は災害備蓄管理士(一般社団法人 防災安全協会)および防災士。「作っている側」と「資格を持って算定している側」の両方から、企業の備蓄について書いています。

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