会社の備蓄品は、どこに置けばいいですか。BCP対策で1か所にまとめてはいけない理由

1か所にまとめないでください。置き場所を決めるのは面積ではなく、エレベーターが止まった状態で、階段を使って取りに行けるかどうかです。大阪府北部を震源とする地震では、大阪府内のエレベーターの55.8%が運転を休止しました。閉じ込めは0.5%です。ほとんどは壊れたのではなく、安全確認が済むまで動かせないという理由で止まりました。

目次

根拠の数字

備蓄品の置き場所について、公的な資料がはっきり書いているのは2つです。分散させること。そして、事前に従業員へ配ってしまう方法も検討すること。どちらも東京都が出している事業者向けチェックリストの項目です。

チェックリストの項目(原文)
高層ビルに所在する企業等において、エレベーターが停止した場合に備え、備蓄品の保管場所を分散させておくことを考慮していますか。
配布作業の軽減や個人の防災意識向上等の視点から、事前に備蓄品を従業員等へ配布しておくといった方法を検討していますか。
保管されている備蓄品が避難通路を塞ぐ障害物となる等、消防法令等の違反状態とならないようにしていますか。
施設内に従業員等が留まれるよう、日頃からオフィスの家具類の転倒・落下・移動防止対策、事務所内のガラス飛散防止対策等に努めていますか。
冊子等(電子媒体も含む)により、施設内待機に係る計画を従業員等に周知していますか。

出典:東京都「帰宅困難者対策ハンドブック」(令和5年3月)事業者向けチェックリスト。

なぜ分散なのか。理由はチェックリストの文中にそのまま書かれています。エレベーターが停止するからです。どのくらい停止するのかは、国土交通省が大阪北部地震のあとにまとめた報告に数字があります。

都道府県最大震度保守台数運転休止休止の割合閉じ込め
大阪府6弱67,773台37,831台55.8%278台
京都府5強15,536台7,440台47.9%24台
奈良県5弱5,140台2,434台47.4%5台
兵庫県5弱33,337台13,824台41.5%38台
滋賀県5弱5,607台1,388台24.8%1台
合計(11府県)197,029台63,338台32.1%346台(0.5%)

出典:国土交通省 住宅局 建築指導課「エレベーターの地震対策の取組みについて(報告)」令和2年7月14日、表1。対象は平成30年6月18日午前7時58分に発生した大阪府北部を震源とする地震(最大震度6弱)です。運転休止台数と閉じ込め台数は保守事業者大手5社分の集計、保守台数は一般社団法人日本エレベーター協会「2017年度昇降機設置台数等調査結果報告」によるもので、ホームエレベーターを除きます。表には割合の小さい福井・岐阜・愛知・三重・和歌山・香川の各県を載せていませんが、合計欄はそれらを含む11府県の数字です。

この表で見るのは、閉じ込めの列ではありません

閉じ込めは346台、運転休止の0.5%です。数として多いのは、閉じ込めではなく「誰も乗っていないまま止まった6万3千台」のほうです。備蓄の置き場所にとって効くのは、こちらの列です。そして震度5弱だった滋賀県でも、4台に1台が止まっています。揺れが強かった場所の話ではありません。

止まったエレベーターが、いつ動き出すか。同じ報告に、こちらの数字もあります。

項目内容
復旧までに要した時間95%超が発災後2日以内に復旧を完了
2日を超えた主な原因エレベーターの損傷/建物の被害(水道の破損による冠水等)
1ビル1台復旧複数台ある建物は1棟につき1台を復旧させてから次の建物へ回るのが原則。全てのビルを一巡するのに、保守事業者によっては2〜4日
復旧の優先順位1 閉じ込めが発生した建物/2 病院等の弱者が利用する建物/3 公共性の高い建物/4 高層住宅(概ね地上高さ60m以上)/5 一般の建物
優先順位2〜4の復旧6割超が12時間以内に復旧

出典:同報告 13ページ 表2および図14。

この数字は誰向けか。自社にどう読み替えるか

上の数字は、最大震度6弱の地震が平日の朝7時58分に起きたときの実績です。自社に当てはめるときは、次の4点を押さえてください。

  • これは上限の事例ではありません。首都直下地震や南海トラフ地震で想定されている揺れの範囲と継続時間は、この地震を上回ります。大阪北部地震の数字は、あくまで実際に起きた1例です。
  • 「運転休止」は壊れたという意味ではありません。地震時管制運転装置が働いて最寄階に停止し、保守員が安全を確認するまで動かせない、という状態を含みます。同じ報告は、全国のエレベーターのうち現行基準に適合した地震時管制運転装置があるのは概ね3割、予備電源やP波感知器を備えていない既存不適格が4割、装置そのものが無いものが3割としています。
  • 一般の事務所ビルは、復旧の優先順位で5番目です。建物が新しいかどうかは、この順番に影響しません。影響するのは、閉じ込めがあるか、病院か、行政に指定されているか、高層住宅かです。
  • 「高層ビルに所在する企業等において」という限定は、狭く読まないでください。都のチェックリストはそう書いていますが、上の表のとおり止まったのは高層ビルに限りません。5階建てでも、4フロア分の階段を箱を持って上ることになります。

何を1と数えるのか

置き場所の検討で「何か所に分けるか」を数えても、答えは出ません。か所の数は手間の量を表しているだけで、発災後に配り終わるかどうかを表していないからです。

数えるのは「箱を1フロア運ぶ回数」です。水は1リットルが1kg。2リットルのペットボトル6本入りの箱は、中身の水だけで12kgあります。階段を使って1人が一度に運べるのは、現実的にはこの1箱です。

数えるもの単位何が決まるか
拠点の数か所鍵の本数と、期限を見て回る手間
運搬箱 × フロア(箱を1フロア動かす回数)発災直後に配り終わるかどうか
拠点と人の距離フロア1人が1往復で済むかどうか
容積㎥(面積×積める高さ)その場所に入るかどうか

4番目の容積と、床が支えられる重さについては、防災備蓄の倉庫はどのくらいの広さが必要ですかで扱っています。この記事は、その手前にある「どこに置くか」の話です。

計算例:従業員100人の会社と、従業員300人の会社

東京都の目安(1人1日3リットル・3日分で9リットル)で、水だけを取り出して数えます。どちらの会社も1フロア20人とし、100人の会社は5階建て、300人の会社は15階建てとします。

項目100人(5階建て)300人(15階建て)
水の総量(3日分)900リットル=900kg2,700リットル=2,700kg
2リットル×6本入りの箱数75箱225箱
1フロア(20人)あたりの箱数15箱15箱
1階に全部置いた場合/最大の上り4フロア14フロア
1階に全部置いた場合/箱を1フロア運ぶ回数150回1,575回
3フロアごとに1か所/拠点2か所(1階・4階)5か所(1・4・7・10・13階)
3フロアごとに1か所/最大の上り2フロア2フロア
3フロアごとに1か所/箱を1フロア運ぶ回数60回225回

300人の会社で、1,575回が225回になります。7分の1です。面積の合計は変わっていません。変わったのは置いた場所だけです。

この「1,575回」と「225回」は、稟議でそのまま使えます。予算が通らない原因は、たいてい金額の大きさではなく、数の根拠が自社の判断に見えることです。逆に、置き場所を変えるだけで運搬が7分の1になると数字で示せれば、追加の棚や保管什器の費用は説明できます。正確に数えることが、予算を通すための近道です。

この「3フロアごとに1か所」は、公表された基準ではありません。当社では、エレベーターが停止したときに重量物を階段で運べる限界を3フロアと想定し、3フロアごとに1か所という置き方で提案しています。顧客と協議して変える前提の値です。建物の階段の幅、踊り場の広さ、従業員の年齢構成によって、2フロアが妥当な会社もあります。

上の表は、東京都の目安をそのまま掛けた素の数量です。当社では、これに携帯トイレの予備率20%と、東京都内の拠点についてのみ帰宅困難者のための10%を、掛け合わせずに足す形(1+0.2+0.1=1.3)で数量に乗せています。この上乗せの考え方と、そもそもの対象人数の数え方は従業員100人の会社は、防災備蓄を何人分そろえればいいですかにまとめました。分母がずれていれば、運ぶ回数も同じだけずれます。

日数を何日で置くかでも、運ぶ量は比例して増えます。当社では、7日分を到達点、3日分を必須ラインとして提案しています。公表基準(内閣府ガイドライン・東京都条例)の3日分は最低限そろえる量であって、目指す先ではないという考え方です。ただし実際には3日分から段階的に導入する企業のほうが多く、それは妥協ではなく現実的な順序だと考えています。これは公表された基準ではなく当社の置き方です。7日分にすると、100人の会社の水は2,100kg・175箱になり、1階にまとめた場合の運搬は350回になります。日数を延ばす判断は、置き場所の判断と同時に行ってください。何日分で設計するかは防災備蓄は何日分そろえればいいですかで扱っています。

実務でつまずく点

1. エレベーターのかごの中に置くことを、国が求めている

先ほどの国土交通省の報告には、今後の取組みとして「防災キャビネットの設置の促進」という項目があります。すでに講じている対策として、次のように書かれています。

国土交通省「エレベーターの地震対策の取組みについて(報告)」令和2年7月14日

「建物所有者・管理者関係団体等に対し、簡易トイレや非常用飲料水等を備蓄した防災キャビネットをかご内に設置することについて依頼」

備蓄品の置き場所の候補に、エレベーターの中が入っています。倉庫でも、各階のロッカーでもなく、かごの内側です。

理由は救出までの時間です。同じ報告によれば、閉じ込めの大半(約87%)は3時間以内に救出されています。裏を返すと、1割強はそれ以上かかっています。大阪北部地震では消防機関が97件出動し、そのうち51件は保守員の到着を待つ間の対応でした。かごの中に何も無ければ、その時間はトイレも水も無い状態です。

自社ビルなら、管理部門の判断で置けます。テナントとして入っているなら、置く主体は自社ではありません。国土交通省が依頼している相手は建物所有者・管理者です。ビルの管理会社に「防災キャビネットは設置されていますか」と1本聞いてください。設置されていれば自社で用意する必要はなく、されていなければ、入居企業として要望を出せる話です。

2. 「エレベーターが止まる」を、閉じ込めの話だと受け取っている

備蓄の打ち合わせでエレベーターの話を出すと、返ってくるのはたいてい「閉じ込めですね」です。閉じ込めは346台、運転休止は63,338台でした。桁が2つ違います。

備蓄にとって問題なのは、誰も乗っていないのに動かないほうです。閉じ込めがゼロでも、倉庫が地下や1階にあれば、そこから上の階へは階段でしか運べません。しかも復旧は「1ビル1台復旧」が原則で、全てのビルを一巡するのに保守事業者によっては2〜4日かかっています。一般の事務所ビルは優先順位の5番目です。

言い換えると、備蓄を1階にまとめた会社は、備蓄はあるのに最初の1〜2日だけ配れないという状態になります。いちばん必要な時間帯です。

3. 上の階に置くと、上の階ほど揺れる

分散配置は、備蓄を上の階にも置くという意味です。ここで反対向きの条件が1つ入ります。気象庁は、高層ビル内の揺れの大きさを示す指標として長周期地震動階級を定めており、その解説に次のように書いています。

気象庁「長周期地震動階級および長周期地震動階級関連解説表について」

「高層ビルの中でも、階や場所によって揺れの大きさが異なります。特に、建物の頂部のゆれ方は、発表した長周期地震動階級よりも大きくなる場合もあります

長周期地震動階級そのものが「地震時の人の行動の困難さの程度や、家具や什器の移動・転倒などの被害の程度」から区分された指標です。つまり、上の階に置いた棚は、下の階に置いた棚より倒れやすい前提で考える必要があります。

棚が倒れれば、備蓄は取り出せなくなるだけでなく、通路を塞ぎます。東京都のチェックリストにも「日頃からオフィスの家具類の転倒・落下・移動防止対策」の項目があり、同じリストには高層ビルについて長周期地震動への対策を問う項目もあります。分散と固定はセットです。分散配置を決めた時点で、固定の費用もその場で見積もってください。あとから足すと、稟議をもう一度出すことになります。

4. 品目ごとに、置くべき場所が違う

全部を同じ場所に置く前提で考えると、ここで詰まります。品目ごとに、置き場所を決めている条件が違うためです。

品目置く場所それを決めている条件
水・主食人のいる階に分散重い。階段で運ぶ量を減らす
携帯トイレ(便袋)便器のある階便器が無ければ使えない。トイレから離すと、発災後に全量を運ぶことになる
簡易トイレ(便器そのもの)組み立てて使う場所の近くかさばる。置いた場所から動かしにくい
使用済みの汚物袋備蓄倉庫とは別の場所回収まで社内に残る。屋外に近く、区画できる場所が要る
毛布・保温シート待機させる場所(会議室等)の近く軽いが、かさが大きい
非常用発電機の燃料法令で決まる危険物関係法令等により消防署への許可申請等が必要

とくに携帯トイレは、置き場所の考え方が水や食料と逆になります。内閣府のガイドラインは、必要な便器の数を「施設のトイレの個室(洋式便器で携帯トイレを使用)と災害用トイレを合わせた数」で算出するとしています。つまり携帯トイレは、いま建物にある洋式便器に取り付けて使う前提です。便器から遠い倉庫に全量を置けば、使うたびにそこまで取りに行くことになります。便器の数から必要な枚数を出す手順は災害用トイレは何人に1基必要ですかに、携帯トイレと簡易トイレで必要な保管スペースがどれだけ違うかは携帯トイレと簡易トイレは何が違いますかにまとめています。

使用済みの汚物袋を置く場所は、備蓄の計画でほぼ必ず抜けます。東京都のハンドブックは「使用済みの汚物袋の保管場所を確保し、保管用のビニール袋、消臭剤、汚物圧縮保管袋等も用意しておきましょう」としています。100人が3日間で1人5回使えば1,500枚です。この面積の見込み方は防災備蓄の倉庫はどのくらいの広さが必要ですかで扱っています。

燃料については、東京都のハンドブック15ページの備考が「危険物関係法令等により消防署への許可申請等が必要なことから、保管場所・数量に注意が必要」と明記しています。発電機は、買えば置ける品目ではありません。

5. 専用の部屋にすれば容積率に算入されない。ただし「専ら防災のために」

自社ビルの改修や、移転先の設計を検討している会社に効く条文があります。建築基準法施行令第2条第1項第4号ロは、容積率の算定に使う延べ面積に算入しない部分として「専ら防災のために設ける備蓄倉庫の用途に供する部分」を挙げています。限度は同条第3項第2号で、敷地内の建築物の各階の床面積の合計の50分の1です。

部分不算入の限度(延べ面積に対して)
備蓄倉庫部分50分の1
蓄電池設置部分50分の1
自家発電設備設置部分100分の1
貯水槽設置部分100分の1

読み落としやすいのは「専ら防災のために設ける」という条件です。文房具や什器と一緒に入れている物置は、これに当たりません。備蓄専用の部屋として設計し、そう使う必要があります。

そして、これは設計の段階で決める話です。建ててから部屋を区切っても、容積率の扱いは基本的に戻りません。新築・増築・大規模な改修の予定があるなら、防災の担当者がその話を聞いた時点で建築士に伝えてください。総務が知らないまま設計が終わる、というのがいちばん多い形です。

6. 置いた場所を、従業員が知らない

分散配置には副作用があります。拠点が増えれば、鍵も増え、場所を覚えてもらう対象も増えます。東京都のチェックリストは「冊子等(電子媒体も含む)により、施設内待機に係る計画を従業員等に周知していますか」と問うています。周知の対象には、備蓄をどこに置いたかが含まれます。

決めておくのは3つです。どの階のどこにあるか。鍵を誰が持つか。その人が休みのとき誰が開けるか。発災が勤務時間内に起きるとは限りません。分散した拠点の期限を誰がどの頻度で見て回るのか、鍵を誰に持たせるのかという運用の設計は、防災備蓄の管理は、総務が1人でも回せますかに整理しました。分散配置は置き場所の問題を解きますが、管理の負荷はその分だけ増えます。

置く場所が無い会社は、置かずに配ってしまう

倉庫に入りきらない、分散させる場所も無い。そのときに検討する手が、東京都のチェックリストに正式な選択肢として載っています。

東京都「帰宅困難者対策ハンドブック」事業者向けチェックリスト

配布作業の軽減や個人の防災意識向上等の視点から、事前に備蓄品を従業員等へ配布しておくといった方法を検討していますか

各自のロッカーや机の引き出しに1人分ずつ置く方法です。3つの効果が同時に出ます。

1か所にまとめる分散して置く事前に配る
倉庫の面積まとめて必要分けて必要不要
発災直後に運ぶ回数多い少ないゼロ
配る手間かかるかかる不要(配り終わっている)
期限の管理1か所で済む拠点の数だけ人数分に分散する
入社・退社への対応数量の増減のみ数量の増減のみ個別に回収・配布が要る
消費されてしまう可能性低い低いある

難点は右の3行に集まっています。期限の管理が人数分に散らばること、異動や退職のたびに個別の対応が要ること、そして本人が食べてしまう可能性があることです。全量を配る必要はありません。1日分だけを配り、残りを倉庫に置くという分け方でも、発災直後に運ぶ回数はその分だけ減ります。

東京都は、従業員自身にも備えを求めています。ハンドブック15ページの備考は「企業等による取組だけでなく、各従業員等自らも備蓄に努めましょう」として、非常用食品、ペットボトル入り飲料水、運動靴、常備薬、携帯電話用電源を例示しています。会社が配るものと、本人が置くものは、分けて考えて構いません。

置く場所が無いことを理由に備蓄そのものを見送る前に、この順番で検討してください。①分散して置く ②事前に配る ③いまある設備を使う(洋式便器に携帯トイレを付ける)④品目を絞る。数量を削るのは最後です。

社内でどう説明するか

置き場所を変える、あるいは分散用の保管什器を買う、という稟議で問われるのは「なぜ1か所ではいけないのか」です。次の5行で書くと、追加の質問がほとんど出ません。

  1. 前提:エレベーターは止まる。大阪府北部を震源とする地震(最大震度6弱)では、大阪府内の保守台数67,773台のうち37,831台(55.8%)が運転を休止した(国土交通省・令和2年7月14日)
  2. 復旧の順番:一般の建物は復旧の優先順位で5番目。1棟1台を復旧させて次へ回る原則のため、全てのビルを一巡するのに保守事業者によっては2〜4日(同報告)
  3. 自社の数量:水は3日分で◯kg・◯箱(1箱12kg)。現在の保管場所は◯階の1か所
  4. いまの運搬量:箱を1フロア運ぶ回数は◯回。分散すると◯回になる
  5. 求めるもの:◯階と◯階に保管場所を新設。什器の固定を含めて◯円

4番目が要です。ここが空欄のまま「分散したほうがよいと思います」と書くと、判断の材料が金額しか残りません。運搬の回数は、社内の人数と階数だけで出せます。外部の見積もりを待つ必要はありません。

当社では、こうした算定の根拠は白黒のA4一枚に収め、数量だけでなく計算式と出典を必ず併記する形にしています。稟議に添える資料は、カラーでも複数枚でもなく、そのまま回せる一枚であるほうが通りやすいためです。予算の通し方そのものは防災備蓄の予算を、社内でどう通せばいいですかにまとめました。

よくある誤解

誤解実際
倉庫は1か所にまとめたほうが管理しやすい管理は楽になりますが、エレベーターが止まると運べません。東京都のチェックリストは分散を求めています
エレベーターが止まるのは高層ビルの話大阪北部地震では、最大震度5弱だった滋賀県でも保守台数の24.8%が運転を休止しました。5階建てでも4フロア分を階段で上ります
閉じ込めさえ起きなければ大丈夫閉じ込めは運転休止の0.5%です。数として多いのは、誰も乗っていないまま止まって動かないほうです
復旧は早いので待てばよい95%超が2日以内に復旧していますが、それは1棟1台を復旧させて次へ回った結果です。全てのビルを一巡するのに2〜4日かかった事業者もあり、一般の建物は優先順位の5番目です
上の階に分散すれば安全上の階ほど揺れます。気象庁は「建物の頂部のゆれ方は、発表した長周期地震動階級よりも大きくなる場合もあります」としています。分散するなら什器の固定が前提です
置く場所が無いから備蓄できない事前配布という手が東京都のチェックリストに載っています。全量でなく1日分だけでも、発災直後に運ぶ量は減ります
備蓄品は全部同じ場所に置けばよい携帯トイレは便器のある階、使用済みの汚物袋は備蓄倉庫とは別の場所、発電機の燃料は危険物関係法令にしたがった場所です
倉庫の一角を備蓄用にすれば容積率が緩和される建築基準法施行令第2条第1項第4号ロの条件は「専ら防災のために設ける」です。他の物と兼用の物置は対象外です

まとめ

  • 1か所にまとめない。置き場所を決めるのは面積ではなく、エレベーターが止まった状態で階段を使って取りに行けるかどうか
  • 大阪北部地震では、保守台数197,029台のうち63,338台(32.1%)が運転を休止。大阪府内は55.8%。閉じ込めは0.5%で、多数は「動かないまま止まった」ほう
  • 復旧は1棟1台が原則で、全てのビルを一巡するのに2〜4日。一般の建物は優先順位の5番目
  • 数えるのは「か所」ではなく「箱を1フロア運ぶ回数」。水は1リットル1kg、2リットル6本入りの箱は12kg
  • 品目ごとに置き場所の条件が違う。携帯トイレは便器のある階、使用済みの汚物袋は別の場所、発電機の燃料は危険物関係法令
  • 分散するなら什器の固定も同時に決める。上の階ほど揺れる
  • 置く場所が無いときは、数量を削る前に事前配布を検討する。東京都のチェックリストに載っている正式な選択肢
  • エレベーターのかご内に防災キャビネットを置くことを、国土交通省が建物所有者・管理者関係団体に依頼している。テナントなら管理会社に確認する

この記事の出典

当社は非常用トイレをはじめとする防災備蓄品を扱っており、備蓄数量の算定と保管場所の計画についてのご相談も承っています。

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この記事を書いた人

株式会社MOSHIMO HACKは、非常用トイレをはじめとする防災用品の製造・販売と、企業の備蓄数量の算定を行っています。代表の寺澤は災害備蓄管理士(一般社団法人 防災安全協会)および防災士。「作っている側」と「資格を持って算定している側」の両方から、企業の備蓄について書いています。

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