北海道・三陸沖後発地震注意情報が出ても、会社の防災備蓄を慌ててまとめ買いする必要はありません。国のガイドラインが事業者に挙げるのは、水や食料などの備蓄品の場所と在庫の有無を確かめることで、そのうえでできる限り事業を続けることが望ましいとしています。期間は地震発生から1週間です。これまでの2回の発表は、どちらも多くの会社で勤務時間外でした。確かめる人と手順を先に決めておくことが要になります。

BCP対策を担当する総務の方に向けた記事です。北海道・三陸沖後発地震注意情報は、2025年12月9日の午前2時と、2026年4月20日の19時30分に発表されました。対象は北海道から千葉県までの太平洋沿岸を中心とする地域です。内閣府は2回の発表を受けてガイドラインを改訂し(令和8年7月)、1回目のあとには対象地域の事業者に「実際に何をしたか」を聞いています。その資料をもとに、発表されたときに備蓄まわりで確かめることを整理します。

南海トラフ地震臨時情報のときの対応は、南海トラフ地震臨時情報が出たら、会社の防災備蓄で何をすればいいですかで扱いました。考え方の骨組みは同じです。この記事では、北海道・三陸沖の情報で対象地域・期間・実際の対応がどうだったかを中心に書きます。

根拠の資料|国が事業者に挙げるのは「備蓄品の場所と在庫の有無の確認」

資料書いていること
内閣府(防災担当)「北海道・三陸沖後発地震注意情報防災対応ガイドライン」令和8年7月改訂 第6章(1)情報が発表された際は、日頃からの地震への備えを再確認する等、個々の状況に応じて適切な防災対応を実施したうえで、できる限り事業を継続することが望ましい。まず地震を想定して策定している自社のBCPを確認し、自社の脆弱性を把握することが重要(75ページ)
同ガイドライン 第6章(2)Ⅲ「発災後のための備え」水や食料等の備蓄品の場所と在庫の有無を確認する/非常用発電設備の準備及び燃料貯蔵状況を確認する/輸送に必要な代替えルート等、BCPを確認する/自治体等との災害時の協定の内容を確認する。発表されたときは「一から準備するのではなく、日頃から行っていた備えが万全の状態となっているかの再確認」を周知・徹底する(77ページ)
同ガイドライン 参考資料「防災対応チェックリスト」上の項目に加えて、早期復旧に必要な資機材の場所の確認、事業継続に必要な調達品の確保(製品や原材料の在庫量見直し等)、発災後の通信手段・電力等の代替設備の確保(91ページ)
同ガイドライン 第4章(1)・第2章(2)7日以内にMw8クラス以上の後発地震が発生する可能性はおおむね1%程度(世界の1,529事例中19事例。おおむね百回に1回)で、平常時の十倍程度。必ず発生するわけではないため、国や自治体から事前避難は呼びかけない(47ページ・21ページ)
内閣府(防災担当)・気象庁 報道発表(令和7年12月9日、令和8年4月20日)防災対応の期間は1週間(地震発生から168時間経過した以降の正時まで)。食料品や生活必需品の必要以上の買いだめ、買い急ぎはお控えください
内閣府(防災担当)「北海道・三陸沖後発地震注意情報の防災対応力向上に向けた取組について」令和8年3月2日1回目の発表のあと(2026年1〜2月)に、対象地域に事業がある指定公共機関等101社に聞いた「実施した防災対応」は、職員等連絡体制の確保64%、施設の点検44%、備蓄の確認・補充28%、利用客等の避難誘導手順の確認24%(8ページ)

備蓄について国が書いているのは「場所と在庫の有無の確認」までです。何をどれだけ買い足せとは、どの資料にも書かれていません。反対に、報道発表は2回とも、食料品や生活必需品の必要以上の買いだめ・買い急ぎを控えるよう呼びかけています。

前提の切り分け|対象は7道県182市町村。東京都は入っていない

国が防災対応を呼びかける地域は、最大クラスの地震で震度6弱以上の揺れか、高さ3m以上の津波が想定される市町村を基本に整理されています(ガイドライン41ページ)。北海道・青森県・岩手県・宮城県・福島県・茨城県・千葉県の7道県182市町村です(同42ページ 図24、3月2日資料2ページ)。

確かめること内容自社への読み替え
対象の地域7道県182市町村。東京都は入っていない本社が東京でも、千葉・茨城・東北・北海道の支店や工場が対象の市町村にあれば、その拠点は対象になる
推進地域との違い「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域」とは一部異なる(4月20日の報道発表)法律の推進地域の一覧で判断しない。内閣府の図24(防災対応をとるべき地域)で、拠点の市町村を1つずつ見る
対象外の地域対象外でも強い揺れや高い津波が生じる可能性はあり、備えの再確認など個々の状況に応じた対応が重要(ガイドライン41ページ)対象外の拠点は「何もしない」ではなく「いつもの点検を前倒しする」くらいの扱い
1%という数字必ず起きるわけではない。一方で、世界のMw8クラス以上212事例のうち193事例は大きな先発地震を伴わず突発的に起きている(同22ページ)情報が出たときだけ備えるのでは遅い。発表は「平時の備えを確かめる日」として使う

法律上の計画づくりの義務がある事業者もいます。推進地域のうち、津波で30cm以上の浸水が想定される区域にある病院・百貨店・旅館など不特定多数が出入りする施設、危険物を扱う施設、鉄道などの旅客運送、1,000人以上の工場などは、対策計画を作り、後発地震注意情報が出たときの1週間の防災対応を書いておく必要があります(ガイドライン80〜81ページ)。指定公共機関を除き、一般のオフィスに法律上の作成義務はありませんが、ガイドラインは発表時の対応を「あらかじめ対策計画等の計画に定めておくことが重要」としています(75ページ)。

数え方|拠点を1と数え、「対象地域か」「必要数に届いているか」を見る

後発地震注意情報で数えるのは、会社全体の在庫ではありません。拠点を1つずつ数えます。拠点ごとに、次の3つを確かめます。

数えるもの単位何が決まるか
対象地域の拠点か所発表されたとき、どこで確認を動かすか
品目ごとの必要数と現物の差品目 × 拠点足りているか。足りないなら平時の調達に回す量
確かめる人人 × 7日分の出勤日1週間のうち、倉庫を開けられる人がいない日があるか

必要数の出し方は平時と同じです。対象人数の数え方は従業員100人の会社は、防災備蓄を何人分そろえればいいですかに、日数の考え方は会社の防災備蓄は何日分必要ですかにまとめました。当社では、日数を7日分を目標、3日分を必須と置いています。3日分は公表基準(内閣府・東京都)で、完了ではなく第1段階という位置づけです。

ここで混ぜやすいのが、2つの「1週間」です。注意情報の1週間は、国が特別な注意を呼びかける期間です。備蓄の7日分は、当社が置いている数量の到達点です。物差しが別なので、「1週間の注意期間だから1週間分を買い足す」という読み方にはなりません。

計算例|対象の市町村にある支店(100人と300人)

千葉県の対象市町村に支店があり、同時に在館する人数が100人と300人の場合で数えます。水は1人1日3リットル、主食は1人1日3食、毛布は1人1枚(内閣府 帰宅困難者等対策ガイドライン 参考資料2)、トイレは1人1日5回(内閣府 避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン)を使います。

品目100人・3日分(必須)100人・7日分(目標)300人・3日分(必須)300人・7日分(目標)
水(1人1日3リットル)900リットル(2リットル×6本の箱で75箱)2,100リットル(175箱)2,700リットル(225箱)6,300リットル(525箱)
主食(1人1日3食)900食2,100食2,700食6,300食
携帯トイレ(1人1日5回×1.2)1,800回分4,200回分5,400回分12,600回分
毛布(1人1枚)100枚100枚300枚300枚

携帯トイレには、当社が置いている予備率20%を乗せています。7道県はどれも東京都の外なので、東京都の帰宅困難者のための上乗せ(10%)は乗せていません。率は掛け合わせずに足す形(1+0.2=1.2、都内の拠点なら1+0.2+0.1=1.3)で数量に乗せています。同じ100人・3日分でも、都内の拠点なら1,950回分、千葉の拠点なら1,800回分です。本社の基準を支店にそのまま当てると、基本量(1,500回分)の1割ぶん、数がずれます。

発表された日に見るのは、この表の「3日分(必須)」の列と現物の差です。届いていなければ、当社では、その場でまとめ買いするのではなく、不足として記録し、平時の調達で補うことをおすすめしています。記録した不足を平時の稟議に載せるとき、効くのは数の根拠です。当社がご相談を受ける中では、予算が通らない原因は金額の大きさより、数が自社の判断に見えることにある場合が多くあります。拠点ごとに式で数えてあれば、不足分の予算は説明がつきます。

実務でつまずく点

1. 2回とも、多くの会社が閉まっている時間に発表された

1回目は、2025年12月8日23時15分ごろの青森県東方沖の地震を受けて、12月9日の午前2時に発表されました。2回目は、2026年4月20日16時52分の三陸沖の地震を受けて、同日の19時30分でした。どちらも、多くの会社で通常の勤務時間外です。

ガイドラインは事業者に、勤務時間外であっても必要な伝達を確実に行えるよう連絡体制を定めておくことを求めています(78ページ)。また、住民への伝達についてのQ&Aですが、夜間に発表された場合も翌朝までに後発地震が起きる可能性があるので迅速に伝えることが必要としており(83ページ Q&A7)、この考え方は社内の連絡にも当てはまります。夜中の2時に発表されると、翌朝の朝礼まで誰も知らないという流れになりがちです。

当社では、発表時に流す連絡網の文面に、備蓄担当が最初の営業日の始業前にやることを1行入れておくことをおすすめしています。「〇〇支店の倉庫で、水・食料・携帯トイレの場所と在庫の有無を確かめ、総務へ報告」の1行です。夜間や休日に鍵を開ける人の決め方は、夜間や休日に大地震が起きたら、会社の防災備蓄はどう考えればいいですかで整理しました。

2. 連絡は回ったのに、備蓄の確認まで降りてこない

1回目の発表のあとの調査では、職員等連絡体制の確保をした事業者は64%でしたが、備蓄の確認・補充は28%でした(101社・複数回答)。対象は指定公共機関や鉄道・運輸・観光業者などで、資料自身も、全ての業種を調べたものではないため全体を表す数値としては正確ではないと断っています(同7ページの注)。それでも、連絡が回ることと備蓄が確かめられることは別だ、という傾向は読み取れます。

「円滑な対応ができた」と答えたのは指定公共機関で93%、それ以外の事業者で58%でした(3月2日資料7ページ)。計画やマニュアルに後発地震注意情報の対応を書いている42社でも、「先発地震から1週間、後発地震に対して注意する措置を講ずる旨」を書いているのは43%です(同18ページ)。ガイドラインも、自治体等への調査で備蓄の確認など実際の行動をとった数は少なかったとして、あらかじめ防災対応を定めて計画に書いておくことが重要だとしています(69ページ)。

連絡網の通知だけでは、受け取った人が「備蓄も見るのか」と気づきません。計画やBCPに「備蓄品の場所と在庫の有無を確かめる」を項目として書き、誰がやるかまで決めておくと、確認が抜けにくくなります。

3. 本社が東京にあると、自社は対象外だと思ってしまう

対象の7道県に東京都は入っていません。本社が東京23区にある会社は、ニュースを見て「うちは関係ない」と受け取りがちです。ところが千葉県と茨城県は対象の道県に含まれており、首都圏の会社が倉庫や工場、営業所を置いていることも多い地域です。

対象かどうかは会社単位ではなく、拠点の市町村ごとに決まります。拠点の一覧に「後発地震注意情報の対象市町村か」の列を1つ足し、図24で確かめた結果を書いておくと、発表の夜に地図を探さずに済みます。支店ごとに何をどれだけ置くかは、支店やサテライトオフィスにも、防災備蓄は必要ですかで扱っています。

4. 1週間の出勤表を見ていない

注意期間は、地震発生から168時間が過ぎたあとの正時までです。1回目は12月16日の0時、2回目は4月27日の17時に呼びかけが終わりました。この1週間には土日も入ります。

国の事例集には、1回目の発表のあと、茨城県の水族館が各課で1週間分の職員の出勤状況と避難誘導時の持ち場を確かめ、人が少ない箇所の配置を組み直したうえで通常の営業を続けた例が載っています(事例集32ページ)。備蓄でも同じ確かめ方ができます。1週間の出勤表を開き、倉庫の鍵を開けられる人が1人もいない日を探します。その日に限って、鍵の預け先を変えておきます。

5. 冬の発表で、寒さの備えを見落とす

1回目は12月でした。ガイドラインは住民向けの日頃の備えの例として、積雪寒冷地域では防寒着、毛布、発熱剤入りの非常食などを準備するよう挙げています(49ページ)。住民向けの例ですが、北海道や東北の拠点に社員がとどまる場面にもそのまま当てはまります。

内閣府の帰宅困難者等対策ガイドラインが数量を示している品目は、水・主食・毛布の3つで、毛布は1人1枚です(内閣府 帰宅困難者等対策ガイドライン 参考資料2)。冬に発表されたら、毛布の枚数と、非常用発電設備の燃料貯蔵状況(ガイドライン77ページ)を一緒に確かめます。発電機で暖房を動かす計画なら、燃料が何時間分あるかまで見ておきます。停電した建物で寒さをどうしのぐかは、停電で冷暖房が止まった会社に社員がとどまるとき、暑さ・寒さ対策の備蓄は何が要りますかで扱いました。

社内でどう説明するか

後発地震注意情報への備えは、買い足しの稟議ではありません。手順を1行足す話として説明すると通りやすくなります。国は必要以上の買いだめ・買い急ぎを控えるよう呼びかけており、ガイドラインは発表時の対応をあらかじめ計画に書いておくことが重要としているからです(75ページ)。

BCPや防災計画には、たとえば次のように書けます。

北海道・三陸沖後発地震注意情報が発表された場合、対象市町村にある拠点では、発表後最初の営業日の始業までに、備蓄担当が水・食料・携帯トイレ・毛布の場所と在庫の有無を確かめ、総務へ報告する。不足は記録し、平時の調達で補充する。注意期間(地震発生から1週間)のうち備蓄担当が不在の日は、鍵の預け先をあらかじめ決めておく。

「なぜ今これを決めるのか」と聞かれたら、2025年12月と2026年4月の2回、実際に発表されたこと、そして1回目のあとの国の調査で、指定公共機関や鉄道・観光業者など101社のうち備蓄の確認・補充をしたのは28%だったことを示せます。費用がかからない手順の話なので、決裁の負担も小さく済みます。

よくある誤解

誤解実際
注意情報が出たら、1週間分の備蓄をまとめ買いする国は食料品や生活必需品の必要以上の買いだめ、買い急ぎを控えるよう呼びかけている。ガイドラインの商業施設の例には「顧客に備蓄買い占めを控えるようアナウンスする」がある(86ページ)。当社では、不足は記録して平時の調達で埋めることをおすすめしている
注意情報が出たら、事業を止めて社員を避難させる国や自治体は事前避難を呼びかけない。適切な防災対応をしたうえで、できる限り事業を継続することが望ましい(47・75ページ)。ただし津波浸水や土砂崩れのおそれがある場所での作業は控える(76ページ)
1週間が過ぎれば、もう大丈夫呼びかけが終わっても、大規模地震発生の可能性がなくなったわけではない(4月27日の報道発表)。先発地震なしで突発的に起きる可能性もある
情報が出てから備えれば間に合うMw8クラス以上の212事例のうち193事例は、大きな先発地震を伴わずに起きている(ガイドライン22ページ)。情報が出ないまま巨大地震が来る前提で、平時にそろえておく
東京の会社には関係ない対象の7道県に東京都は入っていないが、千葉県・茨城県などに拠点があれば、その拠点は対象になる

まとめ

  • 北海道・三陸沖後発地震注意情報は、備蓄をまとめ買いする合図ではない。国が事業者に挙げるのは、備蓄品の場所と在庫の有無の確認で、そのうえでできる限り事業を続けることが望ましいとしている
  • 対象は7道県182市町村で、東京都は入っていない。本社ではなく拠点の市町村ごとに、対象かどうかを確かめておく
  • 2回の発表は午前2時と19時30分。連絡網の文面に「備蓄担当が始業前に確かめる」を1行入れておく
  • 1回目のあと、国が調べた指定公共機関など101社のうち備蓄の確認・補充をしたのは28%。計画やBCPに確認の項目と担当を書いておく
  • 期間は1週間。出勤表で倉庫を開けられる人がいない日を探し、冬の発表なら毛布と燃料も一緒に確かめる

この記事の論点だけでも、拠点ごとの対象地域の判定、品目ごとの必要数と現物の差、夜間の連絡網、1週間の出勤表、冬の毛布と燃料と、確かめることが5つあります。備蓄は人の命に関わるので1つも落とせず、これを担当者1人が覚えて回し続けるのは現実的ではありません。当社はそのための管理の仕組みをご用意しています。

当社は非常用トイレをはじめとする防災備蓄品を扱っており、備蓄数量の算定のご相談も承っています。自社の人数で数えると、どの品目がいくつ要るかは、算定で出せます。

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