国も東京都も、企業が備蓄する生理用品の枚数の目安は示していません。示されているのは「衛生用品は特に必要性が高い」「その他の品目は物資ごとに必要量を算定」までです。当社では、算定対象人数のうち女性の人数に、1日6枚と日数を掛けて置いています。女性40人なら3日分で720枚、7日分で1,680枚です。ただし枚数より先に決めるのは置き方です。配る担当が男性だと、届いていても受け取りに行けないことが、東日本大震災で起きています。

BCP対策の備蓄リストを作っていて、生理用品の行で手が止まった方に向けた記事です。何を根拠に何枚と置けばよいか、どこに置けば使われるか、社内でどう説明するかを、国の資料に沿って整理します。

根拠の数字|国の資料にあるのは「品目」と「置き方」で、枚数は無い

資料書いてあること会社にとっての意味
内閣府ガイドライン 参考資料2(令和8年1月)数量の目安は水・主食・毛布の3つ。「特に必要性が高いもの」に衛生用品(トイレットペーパ等)。その他の品目は「物資ごとに必要量を算定」生理用品の枚数は自社で算定する
同ガイドライン 本文(48ページ)帰宅困難者になる可能性のあるすべての人は、勤務先等に「水、食料、着替え、携帯トイレ、生理用品、携帯電話用充電器等」を常備しておく国は、職場にとどまる場面で生理用品が要ることを前提にしている
内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」(令和6年12月改定)トイレの衛生管理に必要な備品のうち、必需品として優先的に準備するもの(◎)に「生理用品」「サニタリーボックス」。配慮事項に「生理用品の処分用のゴミ箱を用意する」生理用品と、捨てる箱はセットで要る
内閣府男女共同参画局「災害対応力を強化する女性の視点」(令和2年5月)備蓄チェックシートに「生理用ナプキン(普通、長時間向け等)」「おりものシート」「サニタリーショーツ」「中身が見えないゴミ袋」。女性用品は女性が配布を担当し、女性トイレや女性専用スペースに常備する種類と配り方まで決めておく
厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト」正常な月経は周期25日〜38日、出血期間3日〜7日その日に月経中の人の割合は、日によって大きく動く

出典:内閣府(防災担当)「災害発生時における大規模な帰宅困難者等の発生への対策に関するガイドライン」令和8年1月 3・48ページ・参考資料2(32ページ)、内閣府(防災担当)「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」平成28年4月(令和6年12月改定)8・21ページ、内閣府男女共同参画局「災害対応力を強化する女性の視点~男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン~」令和2年5月 17・39・56ページ(56ページの備蓄チェックシートは令和7年8月25日追記)、厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト」月経について(いずれも2026年9月28日確認)。

前提の切り分け|避難所向けの資料を、会社にどう読み替えるか

生理用品について具体的に書いている国の資料は、多くが自治体と避難所の運営向けです。会社は避難所ではありません。ただ、東京都の帰宅困難者対策条例のもとで社員を3日間とどめる会社は、避難所と同じく「女性を含む大勢が、何晩か同じ建物で過ごす」状況になります。内閣府の帰宅困難者ガイドラインも、勤務先に生理用品を常備するよう個人に求めています。職場にとどまる場面で要る品目だということは、国の資料で確かめられます。

読み替えるときの線は2つです。品目と置き方は、避難所向けの資料をそのまま使えます。枚数は、どの資料にも無いので自社で置きます。国が「物資ごとに必要量を算定」としている品目なので、置いた数とその理由を1行残しておけば、それが社内の根拠になります。

数え方|「女性の人数 × 1日の枚数 × 日数」

当社では、生理用品を「算定対象人数のうち女性の人数 × 1日6枚 × 日数」と置いています。公表された基準ではなく、当社の算定での置き方です。数え方の3つの要素を順に説明します。

1つ目は女性の人数です。在籍名簿の女性の数ではありません。発災時に職場にいるであろう人数(算定対象人数)に、女性の比率を掛けます。算定対象人数には来客も入るので、来客の女性もこの比率で拾われます。算定対象人数の出し方は従業員100人の会社は、防災備蓄を何人分そろえればいいですかで扱っています。女性の比率は、総務が持っている集計値で足ります。

2つ目は1日の枚数です。当社では1日6枚と置いています。交換の間隔を3時間、起きて活動している時間を16時間として、16÷3で約5.3枚、切り上げて6枚です。この値は、顧客の女性従業員や産業医の意見を聞いて上書きする前提の仮置きです。

3つ目は日数です。国と東京都が示す目安は3日分で、これが最低ラインです。当社では7日分を到達点に置き、3日分を第1段階と位置づけています。3日分から段階的に導入する会社が多く、それは現実的な順序です。3日と7日の使い分けは防災備蓄は何日分そろえればいいですかで整理しています。

この式は、その日に月経中の人の割合で割り引いていません。女性全員が毎日使う前提の数なので、多めに出ます。割り引かない理由は、後の「よくある誤解」で説明します。

計算例|算定対象人数100人と300人

女性の比率を仮に4割として計算します。自社の比率に置き換えてください。

算定対象人数うち女性(4割と仮定)1日あたり(6枚)3日分(第1段階)7日分(到達点)
100人40人240枚720枚1,680枚
300人120人720枚2,160枚5,040枚

計算式は「算定対象人数 × 女性の比率 × 6枚 × 日数」です。この枚数は、普通の日中用と長時間向け(夜用)を合わせた数として扱います。内訳の考え方は、次の「つまずく点」の2番目で説明します。

実務でつまずく点

1. 備蓄したのに、受け取りに行けない

内閣府男女共同参画局のガイドラインは、東日本大震災で「女性用下着や生理用品が届いても配布担当が男性であったため、女性はもらいに行きづらい」ということがあったと記録しています。物はあったのに、使われなかったということです。

会社でも同じことが起きえます。発災時に備蓄倉庫を開けて物資を配る担当が男性だけで決まっていると、そこへ「生理用品をください」と言いに行くことになります。平常時の職場の関係のままでは、言い出しにくいお願いです。

同じガイドラインは、女性用品は女性の担当者が配ることと、女性トイレや女性専用スペースに常備することを求めています。会社で置き換えると、備蓄倉庫から出すのは発災直後に1回だけにして、女性トイレの個室と、女性用の休憩区画に置いておくということです。災害時に女性用に振り替える個室の考え方は災害用トイレは何人に1基必要ですか、女性用の休憩区画を平時に決めておく段取りは地震のとき、社員を会社のどの階にとどめるかは、先に決めておくべきですかで扱っています。置き場所と運び出す担当を決めておくことには、ほとんどお金がかかりません。予算が限られていても、先に決められる部分です。

2. 日中用だけを買っている

男女共同参画局の備蓄チェックシートは、生理用ナプキンを「普通、長時間向け等」と書いています。種類まで分けて挙げているのは、日中用だけでは足りない場面があるからです。

社員を社内にとどめるということは、会社で夜を越すということです。夜は交換の間隔が空くので、長時間向けが要ります。1日6枚という数は起きている時間で割った数なので、就寝中の分は長時間向けで受け持つ形になります。国の資料に内訳の比率は無いので、日中用と長時間向けの割合は、女性従業員に聞いて決めてください。チェックシート自体が、品目や数量は当事者である女性が参画して検討するよう求めています。

3. 使ったあとに捨てる場所が無い

内閣府のトイレのガイドラインは、トイレの衛生管理に必要な備品のうち必需品として、生理用品と並べてサニタリーボックスを挙げています。女性と子どもへの配慮として「生理用品の処分用のゴミ箱を用意する」も入っています。男女共同参画局のチェックシートには「中身が見えないゴミ袋」があります。

オフィスの女性トイレには、平常時からサニタリーボックスがあります。ところが災害時は、携帯トイレを使うために個室の使い方が変わり、ふだんどおりの回収も当てにできません。ボックスがいっぱいになったあと、中身をどこへ移すかが決まっていないと、数日で使えなくなります。中身が見えない袋を生理用品と同じ箱に入れておき、いっぱいになった袋の置き場所を、使用済みの携帯トイレの置き場所と一緒に決めておいてください。

4. 断水で、下着を洗えない

男女共同参画局は令和7年8月25日、備蓄チェックシートの女性用品の欄に使い捨て下着等を追記しました。いまのチェックシートには、避難所では物干し場がなかったり、断水で洗濯できなかったりする可能性があるため、使い捨て下着やおりものシートがあると衛生を保つのに便利だという趣旨の注記があります。

会社に待機する場合も、下着の替えを持っている人は多くありません。断水していれば洗えません。おりものシートと使い捨て下着は、月経中かどうかに関係なく使う品目です。生理用ナプキンの行とは別に、行を立てておくと漏れません。

5. 誰が使うかを、先に調べようとする

枚数を正確にしようとして、女性社員に月経の周期や、使っている種類を聞こうとする担当者がいます。これはやめてください。健康に関わる情報を集めることになり、集めた時点で保管と更新の段取りが要ります。そこで備蓄の話が止まります。

要るのは女性の人数という集計値だけです。個人の情報を集めずに数量を出す考え方は、食物アレルギーのある社員の分は、どう備えればいいですかと同じです。水やトイレ、要配慮者用のトイレまで含めて、品目ごとにどの人数を使えばよいかは個人の健康情報を集めずに、防災備蓄の算定はできますかにまとめています。聞くなら、日中用と長時間向けの割合や、置き場所の使いやすさのような「物の選び方」を聞きます。個人の体の状態は聞きません。

人数に掛ける式と、その根拠を書いておけば、決裁者に数を聞かれても答えられます。予算が通らない原因は、金額の大きさより、数の根拠が自社の判断に見えることにあります。正確に数えて式を残すことが、予算を通すいちばんの近道です。

社内でどう説明するか

稟議に生理用品を入れるときは、枚数の前に次の4行を置きます。

行書き方の例
1. 位置づけ「内閣府ガイドライン参考資料2で『特に必要性が高いもの』とされる衛生用品。数量は国の目安が無く『物資ごとに必要量を算定』とされている」
2. 枚数の根拠「算定対象人数◯人のうち女性◯人 × 1日6枚(交換3時間・活動16時間)× 3日。女性従業員の意見で見直す」
3. 置き方「女性トイレと女性用の休憩区画に常備し、配布は女性が担当する(内閣府男女共同参画局ガイドライン)。処分用の袋を同じ箱に入れる」
4. 段階「今年度は3日分。次年度以降に7日分への上積みを検討する」

予算が削られたときは、日数を削ります。品目は削りません。まず3日分をそろえ、7日分は翌年度以降に回します。生理用品を割合で割り引いて枚数を減らす削り方は、後の「よくある誤解」の理由から勧めません。品目ごとの優先順位は防災備蓄で、絶対に必要なものと、そうでもないものはありますかで整理しています。

あわせて、社員個人にも勤務先への常備を案内してください。内閣府の帰宅困難者ガイドラインが個人に求めている内容なので、そのまま社内の案内に使えます。ただし個人の常備は、会社の備蓄から差し引く数ではありません。全員が持っているとは限らないからです。

よくある誤解

よくある理解実際
国の基準の枚数があるはず無い。内閣府の参考資料2は、水・主食・毛布以外を「物資ごとに必要量を算定」としている。自社で置いて、理由を1行残す
月経中の人の分だけ数えればよいその日に誰が該当するかは分からない。厚生労働省のサイトにある正常な月経の幅(周期25日〜38日、出血期間3日〜7日)で計算しても、その日に月経中の人は女性のおよそ8%から28%まで動く。女性40人なら3人のことも11人のこともある。当社は割り引かずに置いている
備蓄倉庫にあれば、必要な人が取りに来る東日本大震災では、配布担当が男性で、女性がもらいに行きづらいことがあった。女性トイレや女性専用スペースに常備する
ナプキンがあれば足りる処分用のゴミ箱と中身が見えない袋、おりものシート、サニタリーショーツ、使い捨て下着まで、国の資料に挙がっている
社員が各自で持っているから、会社は要らない国は個人にも常備を求めているが、会社の備蓄の代わりにはならない。全員が持っている前提は置けない

2つ目の8%と28%は、厚生労働省のサイトの数字から当社が計算したものです。出血期間が最も短く周期が最も長い場合は3÷38で約8%、出血期間が最も長く周期が最も短い場合は7÷25で28%です。公表された割合ではありません。幅がこれだけあると、割り引いた枚数は「足りる日もあれば足りない日もある」数になります。そして内閣府のガイドラインは、大都市圏の鉄道・地下鉄が少なくとも3日間は止まる前提を置いています。足りない日に外から補充しにくいのが、発災直後の3日間です。

まとめ

  • 国も東京都も生理用品の枚数の目安は示していない。衛生用品は「特に必要性が高いもの」で、数量は「物資ごとに必要量を算定」
  • 当社では「算定対象人数のうち女性の人数 × 1日6枚 × 日数」と置いている。女性40人なら3日分720枚、7日分1,680枚
  • 枚数より先に置き方を決める。女性トイレと女性用の休憩区画に常備し、配るなら女性が担当する
  • 長時間向け、処分用の袋、おりものシート、使い捨て下着まで行を立てる
  • 月経の周期などは聞かない。要るのは女性の人数という集計値だけ。削るなら日数で、割合で割り引かない

この記事の出典

当社は非常用トイレをはじめとする防災備蓄品を扱っており、備蓄数量の算定のご相談も承っています。自社の人数と女性の比率で数えると、生理用品を含めて何がいくつ要るかは、算定で出せます。

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